ウクライナの原子力発電所の状況 (第1週報:3月3日~3月5日)(現地時間)

ウクライナ国家原子力規制検査局(SNRIU)発表(2022年3月5日公開08:00(現地時間))

ザポロジェ原子力発電所:
1号機: 送電網から切り離し済み
2号機 :460MWで運転中
3号機 :送電網から切り離し済み
4号機 :980MW で運転中
5号機: 送電網から切り離し済み
6号機 :送電網から切り離し済み

ロブノ原子力発電所:
1号機: 送電網から切り離し済み
2号機 :420MWで運転中
3号機 :670MWで運転中
4号機 :1010MW で運転中

フメルニツキ原子力発電所:
1号機 :980MWで運転中
2号機 :送電網から切り離し済み

南ウクライナ原子力発電所:
1号機 :980MWで運転中
2号機 :980MWで運転中
3号機 :送電網から切り離し済み

チェルノブイリ原子力発電所:廃炉中

◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 更新12 2022年3月5日(IAEA声明抄訳)

ウクライナの原子力規制当局は本日(3月5日)、国際原子力機関(IAEA)に対し、ロシア軍がザポロジェ原子力発電所を制圧した翌日には6基の原子炉のうち2基が稼働している同発電所のスタッフとの連絡を維持できていると伝えてきたと、グロッシー事務局長は述べた。

ウクライナ規制当局とザポロジェ発電所管理者は、ウクライナ最大である同発電所で技術的安全システムに問題がなく放射線レベルが正常であることも確認したと、IAEAへの定期報告で連絡してきている。電話の通信回線が1本切断されたが、もう1本は機能しており、携帯電話の通信も可能であるという。

ウクライナ側はIAEAに対し、3月4日未明の出来事で、原子炉からは独立して設置されている訓練棟が大きな被害を受けたと説明。この施設に発射体が命中し、局所的な火災が発生したが、後に鎮火したという。また、実験棟と管理棟にも被害が及んだという。

同発電所の6基の原子炉のうち、1号機は計画的な保守点検を継続中、2号機の電気出力は午前7時45分(中央ヨーロッパ時間)までに760MWeに増加、3号機は系統から切り離されて低出力モード、4号機はフル出力に近い960MWeで運転、5、6号機は停止している。サイト内の使用済み燃料プールは通常通り稼働している。乾式貯蔵施設も目視点検では、損傷は確認されなかったという。

規制当局によると、ウクライナにある他の3つの原子力発電所の安全システムは稼働しており、各サイトの放射線レベルに関するオンライン監視データを引き続き受け取っているが、これらも通常通りであった。合計9基の原子炉のうち6基が現在稼働しているとのことである。

先週からロシア軍の管理下にあるチェルノブイリ原子力発電所のスタッフは、技術者と警備員の交代ができないまま2月23日から現場にいる、と規制当局は述べている。

グロッシー事務局長は、ウクライナの原子力施設を運転するスタッフが安全かつ確実に仕事を遂行できるよう、休息と交代を許可することの重要性を繰り返し強調している。また、ザポロジェ発電所のサイト自体をロシア軍が管理下におき、ウクライナのスタッフが運転しているという「緊迫した」状況は、「確かにあまり長くは続けられない」とも述べている。

なお、国営事業者エネルゴアトムのペトロ・コティン社長は金曜日、グロッシー局長に対し、同発電所で作業シフトを変更することが可能になったと報告した。
https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-12-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine 

◆ウクライナ原子力規制局 CHNPP(チェルノブイリ原子力発電所)の現状 2022年3月5日公開18:00(現地時間)

ベラルーシ共和国の領土からのウクライナに対するロシア連邦の軍事攻撃の結果、2022年2月24日17時00分から、チェルノブイリ立入禁止区域にある次のすべてのChNPP(チェルノブイリ原子力発電所)施設、すなわち(廃止措置段階にある)1から3号機、使用済燃料貯蔵施設ISF-1(湿式)、ISF-2(乾式)、新安全閉じ込め構造物シェルターは、ロシア軍の管理下にある。

チェルノブイリ原子力発電所の職員は、勇気と英雄的行為をもって、10日連続、ローテーションなしで施設の安全な運転を確保する役割を果たしている。

適切な休息が与えられず、チェルノブイリ原子力発電所領域に武装した敵軍が存在するストレスの多い状況は、運転要員の過誤の可能性を大幅に高めている。このような過誤は、深刻な放射線影響につながる可能性がある。

立入禁止区域の自動放射線モニタリングシステムの運用は復旧していない。現在、発電所内および立入禁止区域にある原子力施設およびその他の施設に対する原子力および放射線の安全性の状態に対する規制管理は不可能となっている。

現在、チェルノブイリ原子力発電所の職員との直接の電話接続は、通信回線の損傷により失われている。ロシア連邦の軍隊による立入禁止区域の征圧以来、民間の携帯電話通信はない。利用可能な通信チャネルを通じてチェルノブイリ原子力発電所の職員から得た情報によると、チェルノブイリ原子力発電所施設の安全パラメータは基準範囲内である。

◆ウクライナ原子力規制局 ZNPP(ザポロジェ原子力発電所)の現状 2022年3月5日公開19:00(現地時間)

私たちは、2022年3月4日のロシア連邦の軍隊による激しい戦闘と砲撃によって征圧されたザポロジェ原子力発電所の現在の状況について更新を続けている。

現在、ZNPPの運転員は、原子炉の状態を監視し、運転を確認しており、シフトのローテーションも確保されている。

2基の原子炉が稼働しており、もう1基は停止しており冷却操作が進行中。

ザポロジェ原子力発電所幹部によると、職員は、危険物と原子力発電所の構造、システム、および機器の損傷を特定するために、発電所敷地内と設備の巡視点検を実施している。巡視点検結果の詳細は完了後に報告される。

ザポロジェ地域の放射線状況の変化は記録されておらず、バックグラウンドのガンマ線も基準内である。 原子力発電所自動放射線モニタリングシステムと管理区域および観測区域の自動放射線状況モニタリングシステムは、通常のモードで機能している。

13時30分にエネルホダールへの暖房と給湯が再開された。 2022年3月4日、ロシア連邦軍によるエネルホダールおよびザポロジェ原子力発電所への攻撃の結果、関連する配管が損傷していた。

同時に、ザポロジェ原子力発電所区域とエネルホダールに武装した敵軍が存在することは、発電所員のシフト間の休息に悪影響を及ぼす可能性があり、運転中の過誤の可能性を大幅に高め、深刻な放射線影響につながる可能性がある。

IAEAグロッシー事務局長 3月4日記者会見の概要

IAEAグロッシー事務局長はウクライナ情勢に関して記者会見を行った(3月4日(金) 日本時間18:30)。同事務局長の発言内容のポイントは以下のとおり。

ザポロジェ原子力発電所の状況
・ロシア軍がザポロジェ原子力発電所を征圧したが、原子力発電所は通常のスタッフによって運転が継続され放射性物質の放出はない。
・昨夜、1発の発射体が原子炉近隣の訓練棟に命中し、局所的な火災が発生したが、その後鎮火した。
・原子炉6基の安全システムに影響はなく、放射性物質の放出もない。
・現場の放射線モニタリングシステムは完全に機能している。
・1号機はメンテナンスのため停止中、2・3号機は通常停止。4号機は出力60%で運転中、5・6号機は低出力モードで「待機」状態。

原子力安全確保に関する7つの原則
3月2日に開かれた緊急理事会で原子力安全確保に関して7つの原則が確保されなければならない点を確認した。

1.原子炉、核燃料用プール、放射性廃棄物保管施設等の施設の物理的な健全性が維持されること。

2.すべての原子力安全・セキュリティに関わるシステムと設備が、常に完全に機能すること。

3.運転員は原子力安全・セキュリティ上の義務を果たし、不当な圧力から解放された意思決定ができる能力を有していること。

4.すべての原子力サイトで、外部電源(送電網)からの電力が確実に供給されること。

5.原子力サイトへ、またはサイトから、途切れなく物流サプライチェーンと輸送が行われること。

6.オンサイトおよびオフサイトでの効果的な放射線監視システムと緊急時対応計画と対策が存在すること。

7.規制当局などと信頼できるコミュニケーションが行われること。

チェルノブイリ発電所訪問と安全確保の枠組みに関する協議
ウクライナから緊急支援の要請を受けた状況において、IAEAは今、アクションを起こすべき時である。そのため、自らチェルノブイリ発電所を早急に訪問し、ロシア軍に占拠された原子力発電所をウクライナ側が運転する上で、7原則に基づく安全確保が損なわれないための枠組を両国と協議するつもりである。
現状を考慮すると、訪問は簡単に実施できるとは思えないが不可能ではない。IAEAとして支援を行うとすれば現地に赴くことが必要であり、最初に訪問すべきはIAEAの長でなければならない。
なお今回の提案について、ウクライナおよびロシア双方とも(現時点で)検討中である。

ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 更新11 2022年3月4日(IAEA声明抄訳)

本日、ウクライナは国際原子力機関(IAEA)に対しロシア軍がザポロジェ原子力発電所を征圧したが、原子力発電所は通常のスタッフによって運転が継続され放射性物質の放出はないと報告した、とラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は語った。

ウクライナ関係当局は、IAEAに対し、夜間、1発の発射体が発電所の原子炉1基の近隣の訓練棟に命中し、局所的な火災を引き起こし、その後鎮火したと、通報した。

発電所の6基の原子炉の安全システムは影響を受けておらず、放射性物質の放出もなかった。

現場の放射線モニタリングシステムは完全に機能している。

しかし、運転員は、状況は依然として非常に困難で、すべての安全システムが完全に機能していることを評価するために発電所全体にアクセスすることはまだ不可能であると報告している。

発電所の原子炉ユニットのうち、1号機はメンテナンスのため停止中で、2号機と3号機は通常停止された。4号機は出力60%で運転され、5号機と6号機は低出力モードで「待機」に保たれている。

2人が負傷したと報告された。

グロッシー事務局長によると、ザポロジェ原子力発電所での事象により、IAEA事故・緊急センター(IEC)は完全対応モードとなっている。 IECは、事象進展に関する情報を継続的に受信、評価、および発信するために24時間体制で運用される。

同事務局長は、ウクライナ最大の原子力発電所の状況について引き続き深刻な懸念を抱いていると述べた。また、主な優先事項は、発電所、電力供給、運転員の安全とセキュリティを確保することであるとした。

「私はザポロジェ原子力発電所の状況と、夜中にそこで起こったことに非常に懸念を抱いている。原子力発電所周辺で砲弾を発射することは、原子力施設の物理的健全性を常に維持し、安全に保つ必要があるという基本原則に違反している」と述べた。

同事務局長は、中央ヨーロッパ標準時10時30分に同発電所の状況に関する記者会見を開催した。
https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-11-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine

◆ウクライナ原子力規制局 ザポロジェ原子力発電所に関する最新情報 2022年3月4日公開08:20(現地時間)

2022年3月4日、ロシア軍によるザポロジェ原子力発電所サイトへの砲撃が行われ、その結果、発電所サイト内で火災が発生した。しかし、火災はウクライナ国家緊急サービスユニットによって消火された。現在、死者と負傷者は報告されていない。

ザポロジェ原子力発電所サイトは、ロシア連邦の軍隊に掌握されている。しかし、発電所職員はそれぞれの職場で業務を継続。運転員は各原子炉の状態を監視し、安全運転のための手順要件に従った運転を確実に行っている。また、サイト内の損傷を確認するための巡視点検も実施されている。

現在、ザポロジェ原子力発電所の原子炉では、安全運転のための手順要件に従って、炉の設計システムにより核燃料の冷却が確保されている。もし核燃料の冷却能力が失われた場合は、環境への大規模な放射性物質の放出につながる恐れがあり、チェルノブイリ事故や福島第一原子力発電所の事故などこれまでの事故を上回る可能性もある。また、発電所には使用済燃料貯蔵施設があり、損傷は放射性物質の放出につながることを考慮しておく必要がある。

放射線状況の変化は記録されていない。

◆ウクライナ原子力規制局情報 2022年3月4日公開08:00(現地時間)

ロブノ原子力発電所:
1号機: 送電網から切り離し済み
2号機 :420MWで運転中
3号機 :670MWで運転中
4号機 :1010MW で運転中

フメルニツキ原子力発電所:
1号機 :980MWで運転中
2号機 :送電網から切り離し済み

南ウクライナ原子力発電所:
1号機 :980MWで運転中
2号機 :980MWで運転中
3号機 :送電網から切り離し済み

チェルノブイリ原子力発電所:廃炉中

◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 更新10 2022年3月4日(IAEA声明抄訳)

ウクライナは本日、国際原子力機関(IAEA)に対し、ザポロジェ原子力発電所サイトが前夜ロシア軍に砲撃されたと通報し、グロッシー事務局長は直ちにデニス・シュミハル首相および国内の原子力規制当局とこの深刻な状況について会談した。

グロッシー事務局長は武力行使の停止を訴え、原子炉に被害が出た場合は深刻な危険があると警告した。同局長はウィーン現地時間金曜10:30(日本時間18:30)に記者会見を行う予定である。

ウクライナの原子力規制当局によると、サイト内の火災は主要設備には影響せず、発電所関係者は影響の緩和を図っている。放射線量に変化はないという。

グロッシー事務局長は、同発電所の状況を受けて、IAEAの事故・緊急対応センター(IEC)を完全に対応可能な状態にしていると述べた。
https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-10-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine

◆ウクライナ原子力規制局 ザポロジェ原子力発電所に関する最新情報 2022年3月4日公開07:15(現地時間)

2022年3月4日、ロシア連邦の軍隊がザポロジェ原子力発電所に対して砲撃を行い、その結果、ザポロジェ原子力発電所の敷地で火災が発生した。06:20の時点で、火はウクライナ国家緊急サービスユニットによって消火された。現在、死者と負傷者は報告されていない。

発電ユニットは無傷で、1号機の原子炉補機建屋が損傷しているが、安全に影響を与えるものではない。発電所の安全に重要なシステムと機器は稼働している。現在、放射線状況の変化は記録されていない。

ウクライナ国家原子力規制検査局(SNRIU)の情報危機センターが活動している。 SNRIUおよび原子力・放射線安全科学技術センター(SSTC-NRS)の専門家は、ザポロジェ原子力発電所管理部門との連絡を維持している。

発電所の状態:

1号機停止中。

2号機、3号機は送電網と切り離され、冷却中。

4号機は690MWで運転中。

5、6号機は冷却状態。

現在、ザポロジェ原子力発電所はロシア連邦の軍隊によって占領中。運転員は、原子炉の状態を監視し、安全な運用のための手順要件に従って運転中。

https://snriu.gov.ua/en/news/updated-information-about-zaporizhzhia-npp

◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 更新9 2022年3月3日(IAEA声明抄訳)

ウクライナは本日、国際原子力機関(IAEA)に多数のロシアの戦車と歩兵がサポロジェ原子力発電所から数キロ離れたエネルホダールの町に通じる「ブロックポスト」を突破したしたことを報告してきたと、グロッシー事務局長が語った。

事務局長への緊急書簡の中で、ウクライナの規制当局は、ロシアの歩兵部隊がウクライナ最大の原子力発電所に直行していると付け加えた。「エネルホダールの市街と原子力発電所の路上では交戦が続いており、状況は”深刻”だ」と付け加えた。

グロッシー事務局長は、エネルホダールでの武力行使の即時停止を訴え、展開する軍隊に原子力発電所の近くでの戦闘を止めるよう求めた。同事務局長は、IAEAは現在の困難な状況においても原子力安全と核セキュリティを維持すべく最大限の支援を提供するためウクライナや関係者との協議を続けていると述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-9-iaea-director-general-statement-on-the-situation-in-ukraine

ウクライナの原子力関係機関
国家原子力規制検査局(SNRIU): https://snriu.gov.ua/en/timeline?&type=posts
国営原子力発電会社・エネルゴアトム(Energoatom):https://www.energoatom.com.ua/en/

お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)