ウクライナの原子力発電所の状況 #34
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第112号(現地時間2022年10月5日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、ロシアがウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の運転を監督する計画であるとの本日の報道を受け、関係当局との協議に入ると語った。
グロッシー事務局長は今週キーウとロシアを訪問し、原子力安全/セキュリティ保護エリアの設定合意と早期実施を目指した協議を継続する。欧州最大の原子力発電所であるZNPPはロシア軍に占拠されているが、ウクライナ人スタッフにより運転されている。
事務局長は、現在のZNPPにおける極限状態に置かれストレスの多い労働環境について、繰り返し深刻な懸念を表明。3月に掲げた原子力安全およびセキュリティの7つの不可欠な原則の1つとして、「運転員は原子力安全・セキュリティ上の義務を果たし、不当な圧力から解放された意思決定ができる能力を持たなければならない」と指摘している。
一方、ZNPPに駐在しているIAEA専門家によると、ZNPPでは現在冷温停止中の全6基の原子炉のうち、1基を再稼働させる計画である。ウクライナのシニア運転スタッフは、ZNPPに駐在しているIAEA専門家に、発電所の必要に応じて蒸気と熱を生産するために5号機を低出力で運転する準備が進行中であることを伝えた。運転再開までには、システムや機器を含めた準備が必要で、時間がかかる。
ZNPPで最後まで運転していた6号機は、9月11日に運転を停止。同機は、ZNPPが9月7日に外部の高圧電源をすべて喪失して以来、冷却とその他の重要な安全機能に必要な電力をZNPPに提供してきた。しかし、発電所への外部電源が復旧した後、運転を停止している。
現地のIAEA専門家によると、昨日、ZNPPとエネルホダールの町の中間に位置する工業用地で砲撃があったが、発電所サイト自体に影響はなかった。
ザポリージャの原子力安全、セキュリティ、保障措置の現況
―IAEA事務局長による第2回サマリーレポート(2022年9月6日発表)から抜粋―
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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