ウクライナの原子力発電所の状況 #37
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第118号(現地時間2022年10月14日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)が過去1週間に2度、外部電源へのアクセスを喪失後、ウクライナの技術者がバックアップ電源を復旧させたことを明らかにした。
近くの火力発電所の開閉所を通じて外部のバックアップ電力を利用できるため、最後に残った稼働中の750kV送電線への接続が再び切断された場合でも、欧州最大の原子力発電所であるZNPPのバッファーは確保できると、事務局長は述べている。
土曜日(10/8)と水曜日(10/12)に、砲撃による被害で高圧送電線への接続が一時的に切断されたZNPPは、送電線が復旧するまで非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得なかった。
現地のIAEA専門家は、この数日間でZNPPのバックアップ電源の送電線のうち、火力発電所の開閉所につながる2系統が修復されたことをIAEA本部に報告した。さらに本日、火力発電所の開閉所と送電網をつなぐ330kVの外部送電線のうち1系統も復旧し、必要に応じてそこからも受電できるようになった。
グロッシー事務局長は、「ザポリージャ原子力発電所の運営スタッフは、非常に厳しい条件下で、脆弱な外部電源の状況を強化するためにできる限りのことをしている。原子力安全とセキュリティの全体的な状況は不安定なままだが、バックアップ電源の接続を回復したことは、前向きな一歩である」と述べた。
紛争前、ZNPPは4系統の高圧送電線を通して送電網にアクセスしていたが、そのうち3系統が戦災により使用不可能となった。また、送電網への間接的なアクセスである予備の送電線も、ここ数週間は停止していた。
送電網からの確実な外部電源による電力供給は、6基の原子炉が停止している状態でも、原子力安全を確保するためには不可欠である。この要件は、紛争当初に事務局長が示した「原子力安全およびセキュリティの7つの不可欠な原則」のうちの1つである。
IAEAの専門家によると、5号機の再稼働に向けたさらなる準備作業が続いており、6号機の再稼働に向けた作業も明日(10/15)から開始される予定。再稼働には数日かかる見込み。
さらにIAEAの専門家は、ZNPPにディーゼル発電機20台分の燃料が追加供給されたことを明らかにした。7台のトラックが到着したが、そのうちの5台は最近、ザポリージャ市から、2台は先にロシアの支配地域から届けられたという。ZNPPは現在、外部電源が失われても、少なくとも10日分のディーゼル燃料を確保している。
グロッシー事務局長はここ数週間、ウクライナおよびロシア双方とZNPP周辺の原子力安全/セキュリティ保護エリアの合意と早期実施に向けたハイレベル協議を行っており、原子力事故防止のために保護エリアの設定が緊急に必要であることを強調した。協議は進展している。
同事務局長はまた、最近のウクライナとロシアでのハイレベル会合で、ZNPPのウクライナ人スタッフの労働条件がますます困難で厳しいものになっていることを指摘した。雇用維持のためにロシアの国営企業ロスアトムがウクライナ人スタッフに対してロスアトムと新たな雇用契約を結ぶよう要求しているのに対し、ウクライナの国営事業者エネルゴアトムは彼らにロシア側との契約に応じず、エネルゴアトムの指示に従うよう求めており、スタッフは「受け入れ難しい圧力」に直面しているという。
グロッシー事務局長は、「私は、スタッフが不当な妨害や圧力を受けることなく、重要な仕事を遂行できるようにしなければならないことを明確にした」と事務局長は述べた。
8月上旬以降、ZNPPやその近辺で頻繁に砲撃があり、サイトの原子力安全とセキュリティに対する懸念が広がっている。IAEAの専門家によると、ここ数日、発電所周辺での砲撃はほとんどないようだが、本日午後、ZNPPの境界フェンス外で2つの地雷の爆発があった 。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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