ウクライナの原子力発電所の状況 #38
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第119号(現地時間2022年10月17日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA) のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長によると、ウクライナのザポリージャ原子力発電所 (ZNPP) は今朝、唯一稼働中だった750 kV 送電線への接続を再び失ったが、ZNPPは引き続きバックアップシステムを通じて送電網からの電力供給を受けている。
ZNPPに駐在するIAEAの専門家は、現地時間午前4時頃、750 kV送電線が補助の電圧保護システムによって切断されたとシニア運転スタッフから報告を受けた。電圧が下がりすぎたときに自動的にそのような措置がとられるという。
ウクライナの国営原子力事業者であるエネルゴアトムによると、発電所から離れた場所にある送電システムの一部を構成する変電所が砲撃されたことが原因である。
この10日間でZNPPと外部送電網との接続が失われたのは3度目であり、現在のウクライナでの軍事紛争におけるZNPPの脆弱な状況を浮き彫りにしている。
IAEAの専門家はIAEA本部に対し、ZNPPは現在、原子炉の冷却やその他の重要な安全機能のために必要な電力を近隣の火力発電所の開閉所から供給されており、これは先週復旧したばかりのバックアップ体制であると報告した。
今朝の750 kV送電線への接続の喪失後、約10分間、ZNPPの20台の非常用ディーゼル発電機のうちの1台が稼働を開始したが、バックアップの電力システムが必要な電力を供給したため、すぐに稼働を停止した。
ウクライナによると、南ウクライナ原子力発電所に接続されている変電所への砲撃は、同発電所の運転に影響を与えていないという。
ZNPP駐在のIAEA専門家は、クリミアからディーゼル燃料を積んだ別の3台のトラックと、ザポリージャ市から予備部品と消耗品を積んだ車列が本日発電所に到着したと報告した。昨日、IAEA専門家は5号機の起動作業を継続しない決定がなされたことを確認した。ただし、ZNPPにプロセス蒸気を供給するために5号機は温態停止状態のままである。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)