IAEAのグロッシー事務局長とウクライナのゼレンスキー大統領がキーウで会談、ZNPPの状況について議論


IAEAのグロッシー事務局長とウクライナのゼレンスキー大統領がキーウで会談、ZNPPの状況について議論(現地時間2022年10月6日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とキーウで会談し、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の所有権に関する最近の動向とその影響を踏まえたZNPPの状況について、話し合った。

また、発電所周辺に原子力安全/セキュリティ保護エリアを設定するという事務局長の提案についても話し合い、間近に迫ったロシア訪問後に再び会談することで合意した。

ZNPPのスタッフは今週、雇用維持のためロシア国営企業のロスアトムと新たな雇用契約を結ぶよう要求される一方、ウクライナ国営企業のエネルゴアトムはそれを拒否するよう求めており、スタッフの困難はさらに増している。

事務局長は、ZNPPのスタッフは受け入れ難い圧力に晒されながら、ますます困難な状況下で重要な仕事を遂行していることから、原子力安全とセキュリティに深刻な影響を与える可能性があると述べた。

事務局長はさらに、「これは、ZNPPの安全とセキュリティにとって実に危険な事態だ。ZNPPのスタッフは、自分自身と愛する人のために非常に難しい決断を迫られている。彼らを直面している大変なプレッシャーから救わなければならない」と続けた。

ヨーロッパ最大の原子力発電所であるZNPPは、ロシア軍に占領されているが、ウクライナ人スタッフによって運転されている。この7か月間、発電所やその周辺への砲撃が頻発する極めて厳しい状況の中、軍事衝突中の重大事故を防ぐために、スタッフは重要な任務を遂行し続けてきた。

事務局長は、「戦場の中心にある発電所で、想像を絶する困難な状況の中、重要なタスクを遂行し続けている勇気あるスタッフは、心からの感謝と尊敬に値する。しかし、彼らの仕事と生活を少しでも楽にするため緊急に対策が必要である」と述べた。

これまで事務局長は、ZNPPにおけるストレスの多い困難な労働条件について繰り返し重大な懸念を表明しており、スタッフへの心理的影響は原子力安全とセキュリティに悪影響を及ぼすと強調、さらに最近の事態は、責任者不在の混乱やプラント内の指揮命令系統の曖昧さを招き、状況を悪化させる危険性があると述べた。

今週に入っての進展は、事務局長が3月にまとめた原子力安全およびセキュリティの7つの不可欠な原則のうち、「運転員は原子力安全・セキュリティ上の義務を果たし、不当な圧力から解放された意思決定ができる能力を有していること」「規制当局などと信頼できるコミュニケーションが行われること」の2つの原則に直接影響を与え得るものである。

一方、本日、ZNPPに駐在するIAEAチームから、発電所への道路に近い工業地帯で砲撃があったとの報告があった。

@rafaelmgrossi

ザポリージャの原子力安全、セキュリティ、保障措置の現況
―IAEA事務局長による第2回サマリーレポート(2022年9月6日発表)から抜粋―



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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