ウクライナの原子力発電所の状況 #102


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第186号(現地時間2023年10月4日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)において、4号機で8月中旬に検知された水漏れの修理を終え、サイトでのさまざまな安全機能維持のため蒸気を生産すべく、同機の利用を再開したことを明らかにした。

先週土曜日に4号機の冷温停止から温態停止への移行が完了し、その後、同機の修理作業中に蒸気を一時的に生産していた6号機が冷温停止状態に移行、昨日朝に完了した。

既報のとおり、ウクライナの規制当局である原子力規制検査局(SNRIU)は、ZNPP全6基の運転を冷温停止状態に制限するよう、規制命令を発出している。さらに、IAEAはこれまでZNPPに対して、液体放射性廃棄物の処理を含む、プラントで必要な蒸気生産の代替源を見つけ、すべての原子炉が冷温停止状態を維持できるよう強く求めている。

冷温停止到達後、ZNPPは6号機の保守作業を開始、熱交換器を洗浄するため同機の変圧器や安全トレインの一つから作業に着手した。ZNPPの各原子炉には、3つの別個の独立した冗長システム(「安全トレイン」と呼ばれる)があり、これらが合わさって原子炉ユニットの安全システムを構成している。通常、原子炉ユニットの安全性を維持するために必要に応じて作動できるよう待機状態にある。

これとは別に、IAEAの新しい専門家チームが火曜日、ZNPPに到着し、過去数週間駐在していた同僚らと交代した。これは、昨年9月1日にグロッシー事務局長がウクライナ紛争中の原子力事故防止を支援するため、IAEAの常駐体制を確立して以来、12回目のミッションとなる。

グロッシー事務局長は、「我々の専門家は再び、戦争の渦中にある欧州最大の原子力発電所(ZNPP)において原子力安全とセキュリティを確保するために、前線を渡った。我々は皆、この重要な任務を達成するために全力を尽くすという彼らの決意に感謝しなければならない。彼らの存在はサイトの状況を監視し、公平かつタイムリーな情報を国際社会に提供するために必要だ」と語った。

サイトでのIAEAのミッションにとって、重要な進展があった。グロッシー事務局長によれば、IAEAは日本からの特別拠出金支援により、装甲車の引き渡しを受けた。さらに、ドイツからの資金援助により、IAEAは人員交代のために必要な運転手と警備要員を雇うことができるようになった。

グロッシー事務局長は、「これら車両と専任要員は、IAEAスタッフの交代時の安全性確保に不可欠である。また完全に後方支援に依存することなく、任務を遂行することができる」と語った。

新たなIAEAチームは、ZNPP防護のための5つの具体的原則に抵触する可能性のある資機材がないことが確認できるよう、全6棟のタービン建屋への同日中の立ち入りを要請し続けている。この要求は未だ承認されておらず、チームは1度に、1棟のタービン建屋の状況しか確認できない。

IAEA専門家らはまた、今週許可されると見ていた1,2,5,6号機の原子炉建屋屋上への立ち入りの要求を続けている。

グロッシー事務局長は、「我々はZNPP防護のための5つの具体的原則が遵守されていることを監視するため、必要な立ち入りを得るまで主張していく」と語った。

ウクライナの他の3つの原子力発電所とチョルノービリ・サイトのIAEAチームは、武力紛争が継続中ながらも、これら原子力施設の安全かつ確実な運転、操業を報告している。

IAEAは月曜日、ウクライナの原子力安全とセキュリティを確保する目的で26回目の機材などの搬入が完了した。具体的には、リウネ原子力発電所にプラント内の一次冷却水サンプル中の溶存水素濃度を測定するための機器が提供された。この機器は、日本の特別拠出金で調達された。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-186-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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