ウクライナの原子力発電所の状況 #106


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 190号(現地時間20231025日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長によると、ウクライナのフメルニツキー原子力発電所(KhNPP)付近で夜中に大きな爆発があり、多くの窓ガラスが割れ、一部の放射線モニタリングステーションの電源が一時的に遮断された。軍事衝突が続くなか、原子力安全とセキュリティに対する危険性が改めて浮き彫りになっている。

ウクライナ西部のKhNPPに駐在するIAEAの専門家によれば、現地時間の午前1時26分に空襲警報のサイレンが鳴り響き、その後午前中に2回の大きな爆発音があり、さらに2機のドローンがそれぞれサイトから約5キロと20キロの地点で撃墜されたとの連絡があったという。

「この悲劇的な戦争が続く限り、ウクライナの原子力安全が極めて不安定な状況にあることは変わらない。サイト内の多数の窓が破壊されたことは、それがいかに危機的な状況であったかを示している。次回も今回のように幸運とはかぎらない」「原子力発電所への攻撃は絶対に避けなければならない」とグロッシー事務局長は語った。

サイトには、ドローン攻撃による直接的な影響はなく、爆発によるKhNPPの運転や電力網への接続には影響はなかった。しかし、KhNPPによると、爆発の衝撃で、原子炉建屋への通路、補助建屋、特殊設備建屋、訓練センター、その他の施設を含む、敷地内の複数の建物の窓ガラスが破損したという。また、KhNPPの周辺に設置された地震モニタリングステーションは、爆発による振動を検知している。

IAEAの専門家はその後、現場で粉々になった窓を確認。被害の正確な状況は現在IAEAチームによって調査されており、詳細な情報が提供される予定である。

スラブタ近郊で停電が発生したため、午後になって外部電源が復旧するまでの間、11か所あるオフサイト放射線モニタリングステーションのうち2か所は、一時的にバックアップ電源に頼らざるを得なかった。さらに、近くの町ネティシンで発生した被害のため、KhNPPの一部のスタッフは自宅で作業をしている。

KhNPPには2基の原子炉があり、うち1基は現在運転中、残る1基は8月初旬から定期検査のため運転を停止している。

IAEAは、ウクライナ国家原子力規制局から、事故・緊急時の情報交換チャンネルを通じて、こうした事象についても報告を受けている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-190-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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