ウクライナの原子力発電所の状況 #107


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 191号(現地時間20231027日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長が本日明らかにしたところによると、IAEAの専門家らは、ウクライナのフメルニツキー原子力発電所(KhNPP)近郊で今週発生した大きな爆発による被害を評価し、窓ガラス26枚の破損を確認したが、現場の原子力安全とセキュリティには影響はないと報告した。

水曜早朝の爆風でいくつかの建物の窓が割れ、敷地外の放射線モニタリングステーション2か所への外部電源が一時的に遮断されたことを受け、KhNPPに駐在中のIAEAチームは現場の徹底的な立ち入り調査を実施した。ウクライナ当局は、KhNPPから5kmと20km離れた地点でドローン2機を撃墜したと発表した。

KhNPPは現在、恒久的な代替品が調達できるまで、破損した窓を交換するために薄い金属シートを設置している。1基の原子炉は運転中だが、残る1基は8月初旬から計画停止が続いている。

これとは別にIAEAは、ロシア南部のクルスク原子力発電所(KuNPP)近郊の地域で3機のドローンが確認され、そのうち1機が爆発し、使用済燃料保管建屋の外壁に軽度の損傷を与えたというロシアの報告を受けている。死傷者は出ておらず、KuNPP敷地内の放射線レベルは基準値未満であると報告されている。

「今週の事象は、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に限らず、原子力安全とセキュリティが依然として潜在的に不安定であることを示している。IAEAは今後もウクライナの原子力施設に常駐し、状況を監視し世界に周知させ、軍事紛争中の原子力事故防止に全力を尽くしていく」とグロッシー事務局長は述べた。

ウクライナのZNPPでは、IAEAチームが過去1週間にわたり敷地内の視察を続け、冷却池、隔離ゲート、冷却塔、放水路、さらにはザポリージャ火力発電所(ZTPP)近くの放水路を見回ったが、地雷や爆発物は発見されなかった。

チームは、ここ数か月でZNPPの他の原子炉3基の屋上へのアクセスが可能になった後も、1、5、6号機の屋上への立ち入りを要求し続けている。

IAEAの専門家は、6つのタービン建屋すべてに同時にアクセスする必要がある。しかし、1号機のタービン建屋への部分的な立ち入りが認められたのは、4号機のタービン建屋への同様の制限的な立ち入りを認められた5日後の10月23日であった。

今月初めに冷温停止状態に移行した6号機では、安全システムの保守作業が継続して実施されている。4号機と5号機は原子力安全関連機能と近燐のエネルホダルへ暖房用の蒸気を供給するために温態停止中であり、残りの3基は引き続き冷温停止中である。

IAEAチームは今週、同発電所が冬季にさらなる暖房を供給するための追加の取り組みの一環として稼働を開始した移動式ディーゼルボイラーも訪問した。その使用方法は、発電所の蒸気と、ほとんどのスタッフが勤務するエネルホダルの暖房の需要に応じて異なる。現在、設置された9基のボイラーのうち4基が稼働している。IAEA専門家は、ボイラーが良好な状態にあり、すべてのボイラーに防火ラベルが貼られていること、火災警報装置が設置されていることも報告された。IAEAはまた、エネルホダルに57台のボイラーが設置されているほか、ZTPPに2基の大型ボイラーと工業地域に1基の大型ボイラーが設置されていることも報告された。

ZNPPのサプライチェーンとスペアパーツの配送(紛争中の原子力安全とセキュリティに不可欠な7つの原則の1つ)に関して、IAEAの専門家は最近、ZNPPがロシアの調達プロセスと一致するようにその調達プロセスを適応させたと報告された。さらに、消耗品とスペアパーツの供給は現在ロシアから提供されており、ニーズの約90%をカバーしていると伝えられた。しかし、IAEAはサプライチェーンの物流は依然として困難であると評価している。

IAEAの専門家らによると、過去1週間にわたりZNPPは3号機の原子炉容器の閉鎖の最終調整を進めており、原子炉頭部の密閉作業も継続中であるという。

ウクライナの他の2つの原子力発電所―リウネ原子力発電所と南ウクライナ原子力発電所、およびチョルノービリ原子力発電所のIAEAチームは、紛争が続いているにもかかわらず、これらの原子力施設が安全かつ確実に運営されていると報告している。

今週、IAEAはウクライナの原子力安全とセキュリティを支援するため、同国への30回目の機材供与を実施した。国家規制当局であるウクライナ国家原子力規制検査局(SNRIU)は中性子検出機能を備えたサーベイメーターを受け取り、SUNPPは簡易溶存水素分析装置、振動分析装置、および関連付属品を受け取った。この機器は、カナダ、欧州連合、英国からの予算外寄付を利用して調達された。今回の納入により、IAEAは武力紛争開始以来、700万ユーロ以上相当の原子力安全・セキュリティ設備でウクライナを支援してきた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-191-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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