ウクライナの原子力発電所の状況 #111
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第195号(現地時間2023年11月21日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の5号機が温態停止状態から冷温停止状態に移行中であり、冷却系統で検知されたホウ素の原因を特定するとともに、蒸気と熱生産のため6基中1基の温態停止状態を維持、継続していることを明らかにした。
ZNPPによると、5号機の冷温停止状態への移行は昨日開始され、本日中に完了する見込み。4号機は温態停止状態を維持する。現在のところ、5号機に替わる原子炉を温態停止状態にする計画はない。
冷温停止状態に移行後、ZNPPは5号機の蒸気発生器のうち、1つの二次冷却系統で低レベルのホウ素が検知された原因を特定するためのテストを実施する。
ZNPPは現地のIAEAの専門家らに対して、影響を受けた冷却系統におけるホウ素濃度は技術仕様で許容されている制限内にあると報告した。なお、二次冷却系統では放射能は検知されていない。ホウ酸塩水は、原子力安全を維持するために一次冷却材に使用されている。
ZNPPは、オフサイトにあるディーゼルボイラー(1万7,400kW)3台のうちの1台が11月17日に運転を開始し、多くのプラントスタッフが住む近隣のエネルホダルの町に追加の熱を供給したことから、5号機の冷温停止状態への移行を決定した。
ZNPPは、エネルホダルへの熱供給のほか、サイトの原子力安全を目的に熱と蒸気を供給すべく4、5号機の温態停止状態を維持してきた。IAEAは、代替の蒸気発生源を確保するようZNPPの状況をフォローし続けている。ウクライナの規制当局であるウクライナ国家原子力規制検査局(SNRIU)は6月、ZNPPの全6基の運転を冷温停止状態に制限する規制命令を発令している。
また現地のIAEA専門家らは、先週6号機が電源を喪失し、90分間ディーゼル発電機に依存するという事象を招いた原因を突き止めるため、情報収集を続けている。
IAEAチームは今週後半、ZNPPで計画されている緊急時訓練の視察に招かれている。
グロッシー事務局長は、「ザポリージャ原子力発電所での緊急時対応訓練を、臨時の緊急時管理センターと現場の両方から視察することを楽しみにしている」「緊急時対応訓練は、特に紛争によってリスクが高まっている今、原子力安全にとって非常に重要である」と述べた。
リウネ原子力発電所に駐在するIAEAチームは先週、同プラントの緊急時訓練を視察、そしてチョルノービリサイトのIAEAチームは本日、液体放射性廃棄物処理プラントでの緊急時演習を視察した。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、チョルノービリサイトに駐在するIAEAチームは、紛争が継続しているものの、これら原子力施設が安全かつ確実に運転していることを報告している。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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