ウクライナの原子力発電所の状況 #112


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 196号(現地時間20231124日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、国際原子力機関(IAEA)の専門家が今週、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)で実施された緊急時訓練を視察したことを明らかにした。

木曜日の訓練では、放射性廃液を含む配管が破損し、原子炉1基からの電力が遮断された場合を想定し、対応に焦点が当てられた。

IAEAの専門家たちは、ZNPPの臨時緊急センターから2時間の訓練をウォッチし、緊急時対応の調整を視察した。IAEA専門家はまた、放射線や汚染のモニタリング、一部のプラントスタッフの避難準備なども視察した。訓練終了後、IAEAチームは、訓練シナリオは概ね計画通りに実施されたと評価した。

先週、ウクライナのリウネ原子力発電所を拠点とするIAEAチームは、同発電所での緊急時訓練を視察した。また今週、チョルノービリ・サイトのIAEAチームは、液体放射性廃棄物処理プラントでの緊急時訓練を視察した。

「効果的な緊急事態への準備と対応態勢を整えることは、武力紛争における原子力安全とセキュリティに不可欠な7つの原則のひとつである。ザポリージャ原子力発電所で緊急時対応態勢をテストすることは極めて重要である。我々は、ウクライナの原子力発電所が、緊急事態への備えをさらにテストするために、今後さらに多くの訓練を実施することを奨励する」とグロッシー事務局長は語った。

ZNPPは、ウクライナの原子力安全とセキュリティに関するIAEAの懸念の代表格である。最前線に位置するZNPPは、これまで7回もの電源喪失を経験している。グロッシー事務局長は水曜日、IAEA理事会に対し、ZNPPは依然として困難な状況に置かれており、武力紛争時における原子力の安全とセキュリティの7つの原則のうち6つの原則が「完全または部分的に損なわれている」と述べた。

今週初め、ZNPPの5号機は冷温停止状態に移行し、6基の原子炉のうち1基が、蒸気と暖房を供給するために温態停止状態にある。5号機の二次冷却系統から検出されたホウ素は、技術仕様で定められた基準値以下ではあるものの、同機を温態停止状態から移行させることを決定した。二次冷却系統からは放射能は検出されていない。ホウ酸塩水は原子力安全を維持するために一次冷却材に使用されている。

5号機で冷温停止状態に達した後、ZNPPはIAEAチームに対し、5号機の蒸気発生器の二次冷却系統にホウ素が存在する原因について、すぐには調査しないことを伝えた。IAEA専門家は、ZNPPとの協議およびプラントの視察中にこの問題の監視を継続する。

IAEAチームはまた、11月14日に6号機が一時的に外部電源を失い、90分間ディーゼル発電機に頼っていた原因を完全に把握するための情報収集を続けている。チームは今週、ZNPP側とこの問題について何度も協議を行った。

4号機は、ZNPPの原子力安全関連の活動に蒸気を供給するため、またサイトとプラントスタッフの多くが住む近隣の町エネルホダルへの暖房供給のため、温態停止状態を続けている。追加の暖房は、ZNPPに設置された可搬式ディーゼルボイラーと、近隣の工業地帯に設置されたボイラーによって賄われている。現在、原子炉1、2、3、5、6号機は冷温停止状態にある。

ウクライナの別の場所では、チョルノービリ・サイトに駐在するIAEAチームは、本日、ウィーンの本部から新しいチームが到着し、予定されていた交代を無事に実施した。

フメルニツキー原子力発電所、リウネ原子力発電所、南ウクライナ原子力発電所、およびチョルノービリ・サイトのIAEAチームは、紛争が続いているにもかかわらず、これらの原子力施設の安全かつ確実な運転を報告している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-196-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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