ウクライナの原子力発電所の状況 #113
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第197号(現地時間2023年11月26日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長が明らかにしたところによると、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)は本日、主要外部電源への接続を失い、原子炉冷却のための予備電源に依存することを余儀なくされた。こうした事態は、軍事紛争が続いているZNPPにおける原子力安全とセキュリティの不安定な状況を浮き彫りにした。
これとは別に本日、ZNPPに駐在していたIAEAチームは、発電所近郊からとみられる数発のロケット弾の発射音を耳にした。雲により飛翔体を目視では確認できなかったが、特徴的な音は近くにあった多連装ロケットシステム(MLRS)から発射されたものであることを示していた。
「本日の事象は、ZNPPにおける原子力安全とセキュリティの状況が極めて脆弱であることを改めて明確に示している。最前線に位置する欧州最大の原子力発電所であるZNPPは、この悲劇的な戦争の結果、多くの潜在的な脅威に直面し続けている」とグロッシー事務局長は語った。
「私は、発電所の原子力安全とセキュリティについて、ZNPPから遠く離れた攻撃の影響を受ける可能性のある脆弱な外部電源と、私が5月の国連安全保障理事会で定めた原則を損なうことになる事態に直面している直接的な軍事リスクの両方に関して、依然として深い懸念を抱いている。ZNPP近くからはっきり見えるロケット弾発射などは典型的な懸念材料である」とグロッシー事務局長は述べた。
ZNPPは、現地時間午前10時30分頃に、紛争前に接続していた4系統の送電線のうち、唯一残っていた750kVの主送電線の接続が、ZNPPの北100km周辺で発生したショートが原因で切断されたと発表した。
ZNPPは、唯一利用可能な330kVの予備送電線から外部電力を供給されている。しかし、電源喪失後、非常用ディーゼル発電機1台も4号機に電力を供給するために動作を開始しており、何らかのトラブルがある可能性がある。なお、ディーゼル発電機は、10分後に手動で停止された。
ZNPPによると、750kV送電線は修理中で、再接続時期は不明である。
ZNPPは紛争中に外部電源を繰り返し喪失しており、その中には7回もの外部電源の完全喪失も含まれる。それらのいずれの場合も、原子炉冷却を含む重要な原子力安全とセキュリティ機能に必要な電力を供給するために、現場で非常用ディーゼル発電機を稼働させる必要があった。前回、750kV送電線への接続が失われたのは8月10日で、同日に2回再接続された。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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