ウクライナの原子力発電所の状況 #114
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第198号(現地時間2023年11月28日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、週末に一時切断されていたザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の主送電線が、復旧したことを明らかにした。主送電線は発電所へ外部からの電力を供給するもので、軍事紛争が続くなか、ZNPPの脆弱な原子力安全とセキュリティの状況を浮き彫りにするものである。
欧州最大の原子力発電所が直面し続けている潜在的な危険性を強調するものとして、ZNPPに駐在するIAEA の専門家らは、ここ数日間、2回ほど、発電所近郊からとみられる数発のロケット弾の発射音を耳にした。本日もまた、IAEAチームはZNPP近くから発射されたとみられる多連装砲弾の音を耳にした。
グロッシー事務局長によると、プラント周辺での明らかな軍事行動はZNPPの原子力安全とセキュリティのリスクを高め、今年5月に国連安全保障理事会で示した5つの具体的な原則に抵触するものである。
グロッシー事務局長は、「全ての関係者に対して、ザポリージャ原子力発電所、あるいはその付近において、最大限の自制をするよう勧告する。この悲惨な戦争中に原子力事故を引き起こしても軍事的優位性を得るものは誰一人としていない」「近郊からのザポリージャ原子力発電所へのロケット弾の発射など、ここ最近の出来事は、我々の原子力安全とセキュリティへの懸念をさらに深めるものである」と危機感を露わにした。
また、ZNPPの残る750kVの主送電線1系統が復旧したことで、原子炉冷却やその他安全機能に必要なプラントへの電力供給が可能になった。ZNPPの北100km周辺で発生したと報じられているショートが原因で日曜朝に接続が切断されたが、同日夕刻に接続は復旧した。
750kV主送電線が切断されている間、ZNPPは唯一残った330kVの予備送電線から外部の電力を受電していた。主送電線の復旧は、プラントに外部電力を供給するために不可欠な 2 系統の独立した送電線が再び存在することを意味している。
グロッシー事務局長は、「プラントの脆弱な外部電源は、ウクライナの原子力安全とセキュリティに関して、依然として我々の主要な懸念事項の1つである。昨年の冬を含め、これまでに何度も経験しているように、サイトから遠く離れた攻撃であっても、ザポリージャ原子力発電所に電力を供給するグリッドに重大な混乱を引き起こす可能性がある。原子力安全とセキュリティを脅かしかねないあらゆる軍事行動は、避けなければならない」と述べた。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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