ウクライナの原子力発電所の状況 #116


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 200号(現地時間2023122日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)が一夜にして外部電源を喪失し、原子炉の冷却やその他の原子力安全機能に必要な電力を一時的に非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得なかったことを明らかにした。

ZNPPは、外部送電線の両方(330kVと750kV)への接続を失った。ヨーロッパ最大の原子力発電所が、軍事紛争中に完全な外部電源喪失に見舞われたのは8度目であり、原子力の安全性とセキュリティに対する懸念が高まっている。

現地駐在のIAEA専門家チームの報告によると、ZNPPの唯一の330kV予備送電線への接続は、外部送電網の不具合により、昨日の現地時間午後10時26分頃に切断された。その5時間後、外部からの主要な電力供給源で唯一残る750kVの送電線も切断された。原因は、ZNPPから遠く離れた外部送電網にあると見られている。

その結果、サイト内の20台のディーゼル発電機が自動的に運転を開始した。ZNPPのスタッフはその後、運転中のディーゼル発電機の数を8台に減らしたが、現在停止中の全6基の原子炉冷却に必要な電力は確保されている。

被災した750kV送電線(紛争以前は4系統あったZNPPの主送電線で唯一残っている)は、本日の現地時間の午前8時過ぎに再接続された。再接続後、稼働していた8台のディーゼル発電機は徐々に停止している。現在、電力供給は750kV送電線から行われており、外部からのバックアップの電力供給はない。

「今回の外部電源の喪失は、プラントが遠く離れた場所での出来事によっても影響を受けることを示すものであり、プラントの安全性とセキュリティが不安定であることを改めて認識させるものである。IAEAは原子力事故を防ぐためにあらゆる努力を続けている。また、全ての関係者に対し、プラントをさらに危険にさらすような行動をとらないよう呼びかける」とグロッシー事務局長は語った。

ZNPPの4号機の4つの主冷却ポンプの稼働が、外部電源喪失の間、中断された。現在4号機は、サイト内とZNPPスタッフの殆どが住んでいる近隣の町エネルホダルに暖房と蒸気を供給するため、半温態停止状態から温態停止状態に戻されている。他の5基の原子炉は、冷温停止状態のままである。

今回のZNPPの完全な外部電源喪失は、今年5月22日以来。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-200-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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