ウクライナの原子力発電所の状況 #118


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明第202号(現地時間20231215日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長によると、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)が、2週間前に突然切断された唯一の予備送電線に再接続した。しかし、外部電源は依然として脆弱であり、さらなる途絶の影響を受けやすいという。

軍事紛争の間、ヨーロッパ最大の原子力発電所ZNPPでは、すべての原子炉が停止中でも原子炉の冷却やその他の重要な機能のために電力が必要とされる。そのため、頻繁な停電は原子力安全とセキュリティに対する深刻な懸念材料である。

今月初め、ZNPPは1年半足らずの間に8回目となる外部電源喪失事象に見舞われた。12月2日以降、予備の330kV送電線を修理、今週に復旧するまで750kV送電線1系統に依存していた。紛争前、ZNPPには750kVの送電線4系統と予備送電線が数系統、利用可能であった。

「昨日から、ZNPPは再び2つの外部電源を持つことになった。しかし、電力事情がいかに危機的な状況にあるかは十分すぎるほど承知している。残念ながらこの戦争が続く限り、外部電源の途絶が増える可能性は否定できない」とグロッシー事務局長は語った。

ZNPPが直面している潜在的な危険性をさらに強調するものとして、駐在するIAEA専門家は、ZNPPの比較的近くで爆発音を聞き続けており、これはZNPPの周辺地域で軍事活動が続いていることの証左である。

この1週間、IAEAチームは、緊急時対策センター、乾式使用済燃料貯蔵エリア、5号機の原子炉建屋、全6基の原子炉の中央制御室などの定期的な巡回を続けている。

12月12日、ZNPPはロシアのさまざまな組織のサイト内外の代表者が参加する緊急連絡訓練を実施した。IAEAの専門家も訓練の一部を見学した。これは、先月のZNPPを含め、ウクライナの原子力施設で実施された一連の緊急時訓練で直近のものであった。

ZNPPのIAEAチームは今週も近隣の火力発電所における外部電源接続の状況を把握するため、330kV開閉所への立入りを要請したが、前回の要求時と同様に、立入りは認められなかった。

しかし、IAEAチームは、数日中に原子炉建屋屋上に立入ることができるようになると知らされた。IAEAは以前、2号機、3号機、4号機の原子炉建屋屋上への立入りを許可されたが、他への立入りは許可されなかった。先週、チームは6基すべてのタービン建屋への部分的な立入りを許可された。

IAEAチームは、先月5号機の蒸気発生器の二次冷却系統からホウ素が検出されたことを受け、ZNPPによる措置を含め、現場の保守活動に引き続き細心の注意を払っている。最近、ZNPPの蒸気発生器全24基の二次冷却系統のホウ素濃度レベルは設定制限値内であり、現時点ではこれ以上の措置はとらないとの報告を受けた。

6基の原子炉のうち、5基は冷温停止状態にあるが、4号機は蒸気や熱を供給するために温態停止状態にある。ZNPPはIAEAに対し、現在のところ5号機を温態停止状態に戻す計画はないと報告している。追加の暖房は、ZNPPに設置された可搬式ディーゼルボイラーと、近隣の工業地帯およびエネルホダルに設置されたボイラーで賄われている。

ウクライナのリウネ、フメルニツキー、南ウクライナの原子力発電所およびチョルノービリ・サイトに常駐するIAEA専門家チームは、厳しい状況にもかかわらず、原子力安全とセキュリティが維持されていることを引き続き報告している。

しかし、リウネ原子力発電所とフメルニツキー原子力発電所のIAEAチームは今週初め、ここ数日携帯電話ネットワークが時々不通になったと報告した。その原因は、ウクライナの通信ネットワークに対するサイバー攻撃で、ウクライナの大部分に影響が及んでいるとのことであった。IAEAの専門家たちは、ウィーンの本部と連絡を取り合いながら業務を遂行することができた。また、ウクライナ国内の原子力発電所、国営原子力事業者エネルゴアトム、原子力規制機関の間の通信も維持されている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-202-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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