ウクライナの原子力発電所の状況 #119


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明第203号(現地時間20231221日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)が、廃棄物処理などZNPPのさまざまな原子力安全機能に必要な蒸気を追加供給するため、新たに4台の可搬式ディーゼルボイラーを設置していることを明らかにした。

ZNPPに駐在するIAEAの専門家チームは、先週の日曜日に実施した巡回で設置作業を視察し、その後、新しいボイラーがまもなく完成することを知らされた。ZNPPには現在9台の可搬式ボイラーがあり、そのうち8台が冬季の暖房用として稼働している。

「原子力発電所は、大量の蒸気を必要とするが、これは、1年以上発電していないZNPPにおいても同様である。IAEAはこの目的のためにディーゼルボイラーを設置するようZNPPに働きかけており、我々は計画された追加設置を歓迎する」とグロッシー事務局長は語った。

5基の原子炉が冷温停止状態にあり、4号機はほとんどのZNPP職員が住んでいる近くの町エネルホダルへの熱供給も含め、蒸気と熱を生産するため温態停止状態にある。

紛争中8度目となる外部電源の完全喪失事象が起きてから約3週間が経過したが、ZNPPは依然として750kV主送電線と330kV予備送電線の2系統の送電線に接続されている。

IAEAの専門家たちは、この1週間、欧州最大の原子力発電所であるZNPPのサイト内の原子力安全とセキュリティ状況の監視を続け、3号機の原子炉建屋と電気安全システム室、5号機の中央制御室で巡回を実施し、安全システムのテストが成功したことを確認した。

また、ここ数日は、ZNPPで必要とされる外部電源の入口である750kVの開閉所や、サイト内の水処理施設も視察した。別の巡回では、ZNPPの冷却池、冷却塔、取水・放水路、近隣のザポリージャ火力発電所の放水路を視察した。しかし、今回は冷却池の隔離ゲートへの立入りは許可されなかった。

これとは別に、IAEAの専門家たちはZNPPから、安全上の懸念から12月19日に予定されていた原子炉建屋屋上への立入りができないことを通達された。代替日は今のところ提示されていない。IAEAは今年に入り、2号機、3号機、4号機の3つの原子炉建屋屋上への立入りを許可されたが、その他の原子炉建屋屋上への立入りは許可されていない。

さらにIAEAチームは、先週の月曜日の巡回中に5号機のタービン建屋北西部への立入りを事前に要請したが、許可されなかった。IAEAは10月中旬以来、6基のタービン建屋の北西部を訪問できていない。

IAEA専門家チームは、ZNPPのメンテナンス状況、特に来年のメンテナンス計画、また11月中旬に発生した6号機の電源喪失に伴う原子炉の安全システムに関連する電気設備に引き続き細心の注意を払っている。IAEAの専門家は、2024年のメンテナンス計画がほぼ完成していることを知らされているが、今のところ要求通りには調査できていない。

先週の緊急連絡訓練に続き、水曜日の朝、ZNPPサイトで予告なしの火災訓練が実施された。訓練のシナリオは、2号機の変圧器から油が漏れ、火災が発生したというもの。訓練の参加者には、地域、市、サイト内の消防署が含まれていた。IAEAチームがこの訓練について知らされたのは、訓練の後だった。

ここ数か月間と同様、IAEAチームはZNPPサイト外から、水曜日の夕方に6回の大きな爆発音を聞き続けている。

リウネ、フメルニツキー、南ウクライナの各原子力発電所およびチョルノービリ・サイトに駐在するIAEA専門家は、困難な状況にもかかわらず、原子力安全とセキュリティが維持されていると引き続き報告している。リウネ、南ウクライナ、フメルニツキーの各原子力発電所では今週、IAEAチームの交代が行われた。

先週、IAEAは、オーストラリアからの拠出金を活用し、ウクライナへの原子力安全・セキュリティ関連機器の33回目の搬入を実施した。これは、ウクライナの事業体が人道援助の受領者として国の電子システムに登録することを義務づける新制度の下での最初の引渡しであった。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-203-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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