ウクライナの原子力発電所の状況 (7月4日~7月31日)(現地時間) #12

※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第87号 2022年7月22日(一部仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、サポリージャ原子力発電所(ZNPP)に関する最近の報告は、同国の状況がますます憂慮すべきものになっていることを示していると述べ、ウクライナやその他の地域の公衆衛生を脅かす可能性のある事故を避けるために、最大限の自制を求めた。

「これらの報告は非常に憂慮すべきものであり、IAEAがZNPPに赴くことの重要性をさらに強調している。私は、安全・保安・保障のミッションを一刻も早く現場に送ることに同意し、指揮する決意を持ち続けている。これは緊急事項である。」とグロッシー事務局長は述べた。

IAEAは、ウクライナ南部にあるロシアが占領している施設を、紛争が始まる5カ月前から視察できていない。そのため、6基の原子炉を持つ国内最大の原子力発電所(ZNPP)についての報道を肯定したり否定したりする立場にはない。

「ウクライナでの軍事紛争の初期から、IAEAは、4基の発電所が運転中、15基の原子炉がある国での深刻な原子力事故の危険性について警告してきた。ZNPPまたはその近くでの出来事についての最近の未確認の報告を考慮し、私は、潜在的に深刻な結果を伴う、この非常に現実的な危険について重大な懸念を抱いている。」とグロッシー事務局長は述べた。

「欧州最大の原子力発電所の安全を脅かすような措置を取らないことが極めて重要である。この種の紛争の際には、原子力施設が意図せず損傷を受けることがある。どんな犠牲を払ってもそれは避けなければならない」。

ここ数週間、一連の報道がメディアやIAEAの公式発表の形で報道されているが、これは、ウクライナの原子力発電所の職員が直面している困難でストレスの多い状況がさらに悪化していることを示唆している。これは、ウクライナ事務局長が以前に述べた問題である。さらに、最近になって、発電所の安全に別の潜在的な危険を示唆する報告がなされている。

グロッシー事務局長は、IAEAはZNPPにミッションを派遣して、同発電所での基本的な安全、保安及び保障措置の活動を実施できなければならないと繰り返し強調してきた。

独立した公平な組織であるIAEAの存在は、3月4日以来ロシア軍によって支配され、ウクライナのスタッフによって運営され続けているZNPPの状況をよりよく理解するためにも重要である、と彼は述べた。

IAEAは、保障措置に関して、4つの運転中の原子力発電所から遠隔保障措置データを継続して受け取っているが、チョルノービリからの保障措置データの転送が部分的に失われていると、事務局長は述べた。

ウクライナは本日、IAEAに別途、同国の15基の原子力発電所のうち10基が現在送電網に接続されており、その中には、ザポリージャNPPの3基、リウネNPPの3基、南ウクライナNPPの2基、フメリニツキーNPPの2基が含まれると報告した。他の原子炉は定期点検のため停止している。ウクライナによると、これら4カ所のNPPでは、安全システムが引き続き稼働しており、外部電源も引き続き利用できるという。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-87-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第86号 2022年7月14日(一部仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は本日、オーストラリアとフランスが提供し、IAEAが今週届けた大量の放射線防護・モニタリング装置をウクライナ側が受け取ったことを明らかにした。

IAEAはこれまでにもここ数か月間に3回、ウクライナに安全・セキュリティ・保障措置ミッションを派遣し、機材提供の支援を行ってきた。今回の支援は、IAEAの緊急時対応援助ネットワーク(RANET)を通じて行われた最初のもので、このネットワークでは、放射線量の評価や除染、原子力施設の評価やアドバイス、放射線源の探索や回収など、さまざまな分野の支援について各国がその能力を登録することができるようになっている。

今週届けたものは、安全と放射線防護に重要な線量計やモニター160台以上とボディスーツやマスク、使い捨て手袋やカバーなどの個人防護具数百点である。

ウクライナは今週、IAEAに対して、ザポリージャ原子力発電所の職員が、“継続的なプレッシャー”により、“極めて困難な状況”にあることを伝えた。

グロッシー事務局長は、ザポリージャの職員が直面している厳しく困難な状況やこうした状況が発電所の安全・セキュリティに与える影響について、懸念を深めていることを改めて表明し、IAEAができるだけ早く現地入りする必要性をさらに強調した。

保障措置について、同事務局長によると、IAEAは4か所の原子力発電所から遠隔の保障措置データの受信を継続しているが、チョルノービリからの保障措置データには一部ロスがあることを明らかにした。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-86-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第85号 2022年7月4日(一部仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は本日、IAEAとウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)間で施設からの保障措置データの遠隔伝送が1週間の中断の後、回復したと述べた。

6月25日、IAEAはZNPPに設置された保障措置監視システムへの接続を失った。1か月で2度目となる。ZNPPと協力して問題を解決し、7月1日にデータの転送を再開し、週末も続いている、とグロッシー事務局長は述べた。前回は、5月30日から6月12日までの約2週間接続が切断された。

IAEAは、ウクライナにおける現在の軍事紛争以前からザポリージャ発電所を訪問することができていない。4か月前にロシア軍がこの発電所を占拠したが、発電所の職員が引き続き運営している。グロッシー事務局長は、発電所の職員が極めて困難な状況にあることについて、繰り返し強い懸念を表明してきた。

IAEAは、ウクライナの他の運転中の3つの原子力発電所から遠隔送信される保障措置データを引き続き受信している。しかし、IAEAは、チョルノービリ発電所からの保障措置データ転送を部分的に損失している。

ウクライナは本日、IAEAに15基ある国内の原子力発電所のうち、ZNPPの2基、リウネ発電所の3基、南ウクライナ発電所の2基、フメルニツキー発電所の1基を含む8基が現在系統に接続されていると報告した。他の7基は定期点検のため運転を停止、または予備の状況にある。ウクライナによると、これら4か所の発電所では、安全システムが引き続き作動しており、外部電源も引き続き利用できるという。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-85-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine

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