ウクライナの原子力発電所の状況 #128
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第212号(現地時間2024年2月21日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)が唯一残る予備送電線との接続を失ったことを明らかにし、ZNPPの脆弱な原子力安全およびセキュリティの状況が改めて浮き彫りになった。
ZNPPに駐在するIAEA専門家チームは、昨日(2/20)現地時間の午後2時4分に330kVの予備送電線が、ZNPPにバックアップ電力を供給する330kVの開閉所から約13.5㎞離れたドニプロ川の対岸で発生したトラブルにより切断されたとの報告を受けた。ZNPPによると、切断の原因は不明だが、ウクライナの系統運用事業者から送電線工事が進行中であるとの報告を受けたとのことである。
ZNPPは依然として、750kVの主送電線のみから必要な電力供給を受けているが、330kV送電線の喪失により、現在プラントには外部電源として利用できるバックアップオプションが存在しないことになる。紛争前、ZNPPには750kV送電線4系統と330kV送電線6系統が利用可能であった。
欧州最大の原子力発電所であるZNPPでは、すべての原子炉が停止中とはいえ、原子炉の冷却やその他重要な機能に電力が必要なため、頻繁な送電停止は、依然として原子力安全およびセキュリティにとって深刻な懸念の原因となっている。
今回は外部電源喪失は発生しなかったが、ZNPPは2022年8月以降、外部電源喪失を伴う事象が8回発生し、一時的に非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得なくなった。
グロッシー事務局長は、「極めて脆弱な外部電源の状況は、ZNPPにとって安全とセキュリティに関する重大な課題を突き付けている。主送電線は運用を継続しているが、バックアップ電源の欠如は、プラントの安全とセキュリティの状況が依然として不安定であることを示している」と述べた。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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