ウクライナの原子力発電所の状況 #129


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第213号(現地時間2024年2月23日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)で今週、激しい爆発により窓が揺れ、紛争3年目に突入するなか、原子力事故の危険性を軽減するべく、最大限の軍事的自制が喫緊に必要であることを強調した。

ZNPPに駐在するIAEA専門家によれば、ここ1週間、プラント近くで発生したとみられる先週金曜深夜のものを含め、毎日爆発音を耳にしている。昨日もまた複数回爆発があり、そのうちの1つはこれまでにない爆音であり、サイトに極めて近い場所で起きたことを物語っている。

昨日の大きな爆発を除き、爆発の発生場所や方向を最終的に特定することはできなかったが、ZNPPによると、爆発は「実地訓練」の一環であり、プラントへの砲撃や損傷はなかったという。また人的被害や死傷者はない。

ZNPPはIAEAチームに対し、昨日早朝にサイト敷地外で地雷が爆発したが、損傷や負傷はなかったと別途報告した。

グロッシー事務局長は、「戦争の最前線に位置する欧州最大の原子力発電所であるZNPPの原子力安全およびセキュリティの状況を深く憂慮している。IAEA専門家の報告は、サイトからそう遠くない場所で戦闘が起こり得ることを示している。改めて、プラント保護の5つの具体的原則の厳守、ならびに原子力安全およびセキュリティを脅かし得るいかなる攻撃や軍事行動を避けるよう、全ての関係者に対して要請する」と呼びかけた。

ZNPPが直面している根強い原子力安全およびセキュリティのリスクを示すものとして、ドニプロ川対岸で発生したトラブルにより、唯一残る330kV送電線への接続が切断されたが、発生から3日経っても、未だバックアップ電源が回復していない。

ZNPPは、原子炉冷却ならびにその他の原子力安全機能維持に必要な電力を唯一残る750kV送電線から電力供給を受けているが、現在、外部電源として利用できるバックアップオプションがない。ZNPPは、ウクライナの系統運用事業者から330kV送電線は3月1日までにサイトに再接続される見込みはない、との報告があったことを明かした。

グロッシー事務局長は、「この状況では、外部電源の供給がさらに途絶した場合、プラントは非常に脆弱になる。一刻も早く予備送電線を復旧させることが不可欠だ」と述べた。

今週初め、IAEAチームは、サイトの750kVの開閉所に行き、先月の訪問から状況が変わっていないことを確認した。紛争前に4系統あった750kVの送電線のうち、まだつながっている1系統の送電線に加え、2系統目の送電線修理用のスペア部品も確認した。しかし、紛争のため、修理作業を開始する計画はない。

IAEAチームは昨日、4号機の非常用ディーゼル発電機の定期的な試験を視察した。この発電機は、外部電源が喪失した場合に必要な電力を供給するための最後の防衛線であり、ZNPPでは紛争開始以降、外部電源喪失が8回発生している。

IAEA専門家はまた、ZNPPの電気部門と面談し、年間の保守計画について議論したほか、電気制御室を訪れ、オンサイトおよびオフサイトの電源システムの状況を視察した。IAEA専門家は、配電盤やバッテリーなど、安全システムに関連する老朽化したケーブルや機器はすべて交換されたと伝えられた。

IAEAチームは2月19日、全6基の中央制御室の巡回を実施した。チームは、2,3,4号機の安全パラメータを収集し、スタッフの規制上の権限を確認する機会を得た。その場にいる運転スタッフの多くが、ウクライナのライセンスからロシアの規制当局であるロステフナゾルが発給する「認可」への移行過程にあるとのこと。

ウクライナの他の原子力発電所(リウネ、フメルニツキー、南ウクライナ)に駐在する各IAEAチームは、今週交替した。IAEAチームによると、この3施設とチョルノービリ・サイトでは空襲警報が頻繁に鳴り響くなか、活動を継続し、原子力安全およびセキュリティに係わる問題はないと報告している。チョルノービリ・サイトに駐在するIAEAチームは最近、軍事活動が活発化していることを目撃している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-213-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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