ウクライナの原子力発電所の状況 #130


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第214号(現地時間2024年3月1日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は本日明らかにしたところによると、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)ではここ10日間、予備電源がない状態が続いており、6基の冷却やその他原子力安全機能に必要な外部電源を、唯一残る750kV送電線に依存している。

現地に駐在するIAEA専門家チームによると、330kVの予備送電線はおそらく本日中にも再接続される見込みだが、プラントの外部電源の脆弱な状況は、依然として深刻な懸念の種である、とグロッシー事務局長は指摘した。

そして、「紛争前に利用可能だった計10系統の外部送電線(750kV送電線4系統と330kV送電線6系統)のうち、現在稼働しているのは1系統のみである。予備送電線1系統が利用可能になっても、十分とは言い難い」「欧州最大の原子力発電所であるZNPPはこの18か月の間に、外部電源を8回喪失し、非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得なかった。原子力の歴史上、これは前例のない状況であり、明らかに持続可能ではない。同プラントの原子力安全およびセキュリティについて、引き続き深刻な懸念を抱いている」と事務局長は述べた。

ZNPPは今週、IAEAチームに対して、非常用ディーゼル発電機など、安全システムの定期的な試験を除いて、予定されていた安全関連機器の全ての予防的保守活動を330kV送電線が再接続されるまで延期することを通告した。

さらにプラントが直面する根強い危険性を浮き彫りにするものとして、IAEAチームは、紛争の最前線にあるこの地域で、爆発音や軍事活動の兆候について引き続き報告している。

水曜日早朝(2/28)、IAEAチームは、プラントから少し離れた場所で爆発音や小銃の射撃音を耳にした。ZNPPはIAEAチームに対し、ロシア軍がこのエリアにおけるドローン攻撃から「プラントを守る」ための措置を講じているが、ZNPP自体は攻撃されておらず、被害や死傷者はなかったと伝えた。この事象についての詳細は現在のところ、不明である。IAEAチームは、そのエリアへのアクセスを要請したが、調査すべき被害はなく、エリアはプラントの管轄外であるとされた。

今週初め、ZNPP側はIAEAチームに対して、日曜日の夕方(2/25)、多くのプラントスタッフが住むエネルホダルで通信機器を設置した屋根を狙ったドローン攻撃があったことを伝えた。翌日、IAEAチームは攻撃があったとされる建物を確認するためにエネルホダルに赴き、建物の外側を目視した。訪問時には、被害の兆候は確認できなかった。

1週間を通じて、IAEAチームは冷却池や冷却塔、6基の原子炉に冷却水を提供するスプリンクラー池など、ZNPPサイトの巡回を実施した。現在、6基の原子炉のうち、5基が冷温停止状態、1基が温態停止状態である。スプリンクラー池は満水であり、2023年中旬に下流のカホフカダムが破壊されて以降に建設された11基の井戸から冷却水が供給され続けている。

IAEAチームはまた、ザポリージャ火力発電所(ZTPP)の放水路の隔離ゲートを訪問したが、ZNPPの大型冷却池の隔離ゲートへはアクセスできなかった。その場所をIAEAチームが最後に確認したのは昨年11月である。

先週、IAEAチームは5号機の安全システム室の巡回を実施し、そこで一部の安全システムポンプの定期的な試験が進行中であることを確認した。IAEAチームはまた、サイト内にある2つの新たな燃料貯蔵施設も訪問した。

この1週間、IAEAチームが実施した巡回のなかで、2月上旬には撤去されたように見えた対人地雷が、人が立ち入れない境界フェンス内にあることが再び確認された。

ウクライナの他の原子力発電所(フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ)とチョルノービリ・サイトに駐在する各IAEA専門家チームは、一部の施設では空襲警報が頻繁に鳴り響くなど、困難な戦時状況下にあるなか、原子力安全およびセキュリティは維持されていると報告している。フメルニツキーに駐在するIAEAチームは水曜日、2回避難を余儀なくされた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-214-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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