ウクライナの原子力発電所の状況 #137


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第221号(現地時間2024年4月9日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、ドローンが本日、再びウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)を攻撃したことを明らかにした。これは、ZNPPの原子力安全およびセキュリティがさらに悪化していることを示す最新の兆候である。

日曜日(4/7)にドローン攻撃による影響を検証したZNPPに駐在するIAEA専門家チームによると、本日の現地時間午前11時5分、小銃の発砲音と大きな爆発音を耳にした。同じころ、ZNPPは後に、近づいてきたドローンが訓練センターの屋上で爆発したと発表した。

この事象は、2022年2月に紛争が始まって以来、幾度となく砲撃を受け、これまでに8回外部電源を喪失した欧州最大の原子力発電所(ZNPP)における、既に非常に不安定な原子力安全ならびにセキュリティの状況に対する懸念をさらに深めるものである。

訓練センターはサイト境界のすぐ外側にあり、1号機から約0.5㎞離れた場所にある。この事象によるZNPPの原子力安全およびセキュリティへの脅威は何もなかった。ZNPPの全6基の原子炉は、過去20か月にわたり停止中である。しかし、訓練センターには、ZNPPのスタッフが常駐している。IAEAチームは、発生し得る影響を評価するために建物への即時立ち入りを要求したが、軍事的な状況により立ち入り不可とされた。チームは日曜日と同様、立ち入りを引き続き求めていく。

グロッシー事務局長は、「本日報告された事象は、サイト境界外とはいえ、原子力安全およびセキュリティに重大な危険をもたらし、軍事的自制を繰り返し求めているにもかかわらず、このような攻撃を続ける用意があることを明らかに示すものであり、不愉快だ。誰の仕業か分からないが、彼らは戦火を弄んでいる。原子力発電所を攻撃することは、極めて無謀かつ危険で、即刻中止しなければならない」と述べた。

日曜日のドローン攻撃は、ZNPPが軍事行動の直接的な標的となったのは、2022年11月以来であり、プラントの安全に対する新たな深刻な脅威を示唆している。これはまた、昨年5月に国連安全保障理事会でグロッシー事務局長が設定した原子力施設を守る5つの具体的原則に対する明白な違反でもある。

IAEAチームの確認によって裏付けられた日曜日(4/7)と本日の事象に加えて、IAEA専門家は、ここ数日間に起こった他の同様の出来事についてもZNPPから報告を受けた。金曜日にZNPPは、同サイトの酸素・窒素製造施設の近くでドローン攻撃があったと発表した。日曜日には、すでに報告されたものに加えて、爆発音が聞こえ、さらに、サイト境界外の近くの港と訓練センターで、ドローンによる攻撃があったとされる2件の情報が入った。昨日、ZNPPは6号機のタービン建屋上空でドローンが撃墜されたと発表した。いずれの場合も、IAEAチームはこれらの場所への訪問を要請したが、セキュリティ上の理由で拒否された。

ZNPPのここ最近の状況の深刻化をふまえ、グロッシー事務局長は来週、ウクライナ情勢について国連安全保障理事会に説明する予定であることを明らかにした。ウクライナ情勢について15か国の理事国に対しスピーチをするのは、この2年余りで7回目となる。

「私は、この悲劇的な戦争において、重大な原子力事故を防ぐために全力を尽くす決意を固めている。この大きな危機に際して、私は安全保障理事会での演説で事態の深刻さを強調するつもりだ。ウクライナをはじめとする世界の人々や環境に影響を及ぼす可能性のある重大な原子力事故を防ぐためのIAEAのたゆまぬ努力にとって、安全保障理事会の支持は何よりも重要である」とグロッシー事務局長は述べた。

IAEAチームはここ数日間、プラント付近からの爆発や小銃による射撃、砲撃など、プラント近くでの軍事行動を継続して耳にしている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-221-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)