ウクライナの原子力発電所の状況 #139
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第223号(現地時間2024年4月13日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の4号機が13日早朝、冷温停止状態に達したことを明らかにした。全6基の原子炉すべてが、冷温停止状態にあるのは2022年後半以降、初めて。
IAEAチームが以前報告したとおり、ZNPPの計画に沿って、プラントは4号機を金曜朝(4/12)に温態停止状態から冷温停止状態への移行を開始し、本日の午前7時30分に移行が完了した。この措置は、プラントの多くのスタッフが住む近隣の町エネルホダルが最近、冬季の暖房シーズンを終えたと発表したことを受け、とられたもの。
グロッシー事務局長は、「私は、以前からIAEAが勧告しているように、この進展を歓迎する。これは、施設の全般的な安全性を高めるものである」「IAEAは、今後もZNPPの運転状況を注視し、急速な変化と困難のなかで、技術的に実行可能な代替案を提供していく」と述べた。
ZNPPは2022年9月に国内送電系統への電力供給をストップしたが、地域暖房やサイトの液体廃棄物処理用のプロセス蒸気を供給するため、2022年10月以降、少なくとも6基中1基を温態停止状態として維持してきた。
IAEAの勧告により、プラントは今年初め、このような廃棄物を処理するため、新たに設置された4台のディーゼルボイラーの運用を開始したが、4号機は温態停止状態を維持し、主にエネルホダルに熱を供給していた。その他の5基は冷温停止状態にあったが、今回4号機もそれに加わった。
冷温停止状態では、熱除去が何らかの理由で中断された場合、原子炉内の核燃料の冷却が困難になるまでに数日の追加対応のマージンがある。原子炉に必要な冷却水も、温態停止時よりも少なくて済む。この問題は、2023年中旬に下流のカホフカ・ダムが破壊されて以降、さらに困難なものになった。
この対応は原子力安全にとって前向きなものであるが、過去1週間ZNPPを標的とする数回のドローン攻撃など、深刻な危険性に直面している欧州最大の原子力発電所であるZNPPの状況は極めて脆弱なままである。
グロッシー事務局長は、「原子炉が冷却されることで、万が一の事故の際に、追加のバッファーを提供できるため、全6基を冷温停止状態にする決定自体は前向きなこと」と評価する一方、「最近急激に悪化しているプラントの状況をめぐる根本的課題を解決するものではない。間違いなく、この主要な原子力施設における原子力安全およびセキュリティは、依然として非常に不安定である」と述べた。
IAEA専門家チームの今朝の報告によると、30分足らずの間にさまざまな距離から、16発の砲撃音をはっきりと耳にしたと報告、ZNPPの潜在的なリスクが再び浮き彫りなっている。
ウクライナの規制当局であるウクライナ国家原子力規制局(SNRIU)は以前、ZNPPの全6基の運転を冷温停止状態に制限するよう、命令を発出していた。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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