ウクライナの原子力発電所の状況 (8月9日)(現地時間) #14
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第89号 2022年8月9日(一部仮訳)
ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、ウクライナがIAEAに対し、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の使用済燃料貯蔵施設近くで土曜日(8月6日)に発生した砲撃により若干の被害を受けたが、放射線測定では引き続き通常のレベルを示していると報告したことを明らかにした。
ウクライナによると、金曜日(8月5日)の砲撃で発電所の外部電源システムが損傷したが、土曜日の砲撃では、ZNPPにいたウクライナ人警備員が負傷した。また、使用済燃料貯蔵施設の壁や屋根、窓、放射線制御システムの通信ケーブルが損傷し、3つの放射線検出センサーの機能に影響が出た可能性がある。しかし、使用済燃料の入ったコンテナや施設周辺に目に見える損傷はなかった。
グロッシー事務局長によると、ウクライナから提供された情報に基づき、IAEAの専門家が評価したところ、土曜日の砲撃による原子力安全に対する緊急の脅威はない。
しかし、金曜日と土曜日のZNPPへの砲撃は事実上、紛争当初に事務局長が示した原子力発電所の物理的完全性、安全・セキュリティシステムの機能、スタッフ、外部電源に関するものなどを含む、原子力安全とセキュリティ確保に関する7つの原則に違反している。
グロッシー事務局長は、今回の事象は、紛争が緊急事対応およびコミュニケーションに係る原子力安全とセキュリティの柱をも危険に晒したことを示した、と述べた。ウクライナは事象後、発電所職員がZNPPのサイト内危機管理センターへのアクセスを制限し、サイト外のセンターへのアクセスが可能であっても、緊急時対応活動に影響を与える可能性がある、とIAEAに報告した。さらに、ウクライナの規制当局は、ZNPPとのコミュニケーションは「非常に限られており断片的」であったと述べている。
ウクライナの規制当局はまた、同発電所では外部電源の利用が引き続き制限されていると伝えた。
グロッシー事務局長は、ZNPPの状況に重大な懸念を抱いており、原子力の安全とセキュリティを脅かすいかなる軍事行動も停止しなければならないと繰り返し述べた。また、原子力安全とセキュリティの状況を安定させるため、IAEAの専門家ミッションをできるだけ早くプラントに派遣する必要性を改めて強調した。
IAEAはウクライナ当局と緊密に連絡を取り合い、原子力の安全とセキュリティの状況を引き続き監視していくと述べた。
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