ウクライナの原子力発電所の状況 #141


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第225号(現地時間2024年4月25日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に駐在するIAEA専門家チームからの情報として、ZNPPが立地する地域において軍事行動が継続して行われていることを明らかにした。しかし、この1週間、ZNPPへの新たなドローン攻撃に関する報告はない。

今月初めに行われたZNPPを標的とする一連のドローン攻撃は、ZNPPの不安定な原子力安全およびセキュリティに関する懸念を浮き彫りにするものであり、グロッシー事務局長は4月15日の国連安全保障理事会での演説において、これら「無謀な攻撃」と最大限の軍事的自制を即刻中止するよう勧告した。

3日後の4月18日、ZNPPは同サイトに駐在するIAEA専門家チームに対して、ZNPPの訓練センターに再びドローンによる攻撃未遂があったことを報告した。

グロッシー事務局長は、「1週間前にこの事象が報告されて以降、ドローン攻撃は確認されていない。しかし、一瞬にして突然状況が悪化し得ることを経験上知っている。状況は、極めて予断を許さない状況にある」と述べた。

月曜日(4/22)、IAEA専門家チームは、4月7、9、18日にZNPPのサイト境界のすぐ外側にある訓練センターへのドローン攻撃の報告以降、初めて同センターを訪問した。但し、屋上は視察できなかった。訓練センターの代表によると、今回のドローン攻撃による被害はなかったが、スタッフにとってストレスの多い、恐ろしい経験であったという。

IAEAチームは、訓練センターが2022年にプラントが数回攻撃を受けた際の損傷を修復中であることを確認した。

IAEAチームはZNPPサイトのさまざまな距離から、毎日砲撃音を継続して耳にしている。先週金曜日(4/19)、空襲警報がサイトのスピーカーシステムから鳴り響き、90分間、屋内退避するよう指示された。

IAEA専門家チームは、全基が冷温停止状態にあるZNPPサイトの巡回を継続して実施している。3号機の原子炉建屋と安全システム室を訪問し、主冷却材ポンプや蒸気発生器のほか、低圧炉心冷却ポンプ1台と使用済燃料プール冷却ポンプ1台の運用状況を視察した。チームはまた、3号機のポンプステーションに行き、機器がきちんと整備されているかどうか確認した。

先週金曜日(4/19)、IAEAチームは、5号機のタービン建屋を訪問し、建屋の3階部分を視察することができたが、建屋の西側部分への立ち入りは許可されなかった。

これとは別に、ZNPPは、ZNPPの防火システムを更新する準備を進めているという。

さらに、IAEA専門家チームは今週、サイトの使用済燃料乾式貯蔵用キャスクの状況を確認、キャスクのシールの健全性などに異常はなかった。IAEA専門家チームは、ZNPPがキャスク外側の健全性について毎月目視で確認していること、ひび割れや腐食をチェックするための計装機器を用いた健全性評価を毎年行っていること、カメラやその他の計装機器を用いた内部健全性チェックを4年毎に行っていること、などの報告を受けた。

緊急時対応に関するZNPP側との最近の協議によれば、原子力安全に重要なサイトの冷却システムに関するシナリオを基に、緊急時訓練が近く準備されている。IAEA専門家チームは、この訓練を見学したいというチームの意向をZNPP側に伝え、日程の連絡を待っている。

フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所、そしてチョルノービリ・サイトに駐在するIAEAチームは、この1週間で数日空襲警報が発せられるなど、紛争が続くなか、原子力安全およびセキュリティは維持されていると報告している。

予定されていたメンテナンスおよび燃料交換作業がリウネの4基中2基で、南ウクライナの1基で進行中。この2サイトに駐在するIAEA専門家チームは今週交代した。

IAEAは、ウクライナの原子力安全およびセキュリティ維持のため、機器の供給を継続している。先週、ウクライナのVostokGOK施設は核物質防護の強化を目的とした機器の供給を受け、昨日は、南ウクライナ原子力発電所がベータ線スペクトロメータを受領した。ウクライナへの機器供給はこれで44回目。これらの機器は、日本と英国の資金援助により調達された。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-225-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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