ウクライナの原子力発電所の状況 #143


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第227号(現地時間2024年5月9日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長が本日明らかにしたところによると、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)では、プラントを防護するための5つの具体的原則の遵守状況をIAEAが監視を継続している。

この1週間、ZNPPに駐在するIAEA専門家チームは、ほぼ毎日、発電所から少し離れた場所での砲声や発電所周辺での射撃音など、軍事行動を耳にしている。

昨日、IAEA専門家は、約90分間、屋外への移動が制限される空襲警報が鳴ったと報告した。冷却池のエリアにドローンが飛来したためだという。IAEA専門家は、移動制限期間中に爆発音を聞いていなかった。本日早朝、別の空襲警報が鳴り、再び屋外への移動が制限され、チームの敷地境界内で予定されていた巡視が延期された。

欧州最大の原子力発電所であるZNPPが直面する絶え間ない危険は、先月初めにZNPPが複数のドローン攻撃の標的となった際に浮き彫りになった。先週述べたように、IAEAは、ZNPPの6号機と訓練センターの近くにドローン操縦士の訓練基地とドローン発射台が配備されたとの報道も承知している。IAEAの専門家は、敷地内でドローンが発射された証拠や訓練施設や発射台の存在を確認していないが、近くの研究棟の屋上へのアクセスを要請した。ZNPPは、この要請が検討中であることをIAEAチームに伝えている。

「国連安全保障理事会(UNSC)のメンバーが広く支持する5つの具体的原則は、この点で非常に明確である。この大規模な原子力施設からの、またはこの施設に対するいかなる種類の攻撃もあってはならない」とグロッシー事務局長は述べた。

IAEAチームは今週も敷地内の定期的な巡視を続けており、その中には2つの新燃料貯蔵施設や、IAEA専門家が放射線モニタリングを実施した敷地の境界も含まれているが、すべての測定値は正常範囲内だった。

IAEA専門家はまた、敷地内のスプリンクラー池の水位も測定し、現在の冷温停止状態にある原子炉を冷却するのに十分な水位であることを確認した。

ZNPPの人員状況について、ZNPPはIAEAチームに対し、現在約5,000人のスタッフがおり、昨年よりは増加しているが、紛争前よりはまだ大幅に少ないと伝えた。

既報であるが、ロスアトムが運営する原子力発電所(NPP)の名目上の人員数はウクライナの人員数より大幅に少ない。ZNPPは人員の採用を継続しており、現在800人の空席があることを明らかにした。それでも、ZNPPは、停止状態となっているユニットの現状に対処するため、中央制御室の運転員の必要数を含め、十分な有資格者を採用していると述べた。

しかし、IAEA専門家は、中央制御室のスタッフと自由に話すことを引き続き妨げられており、ZNPPの原子力安全の維持に不可欠なこれらのスタッフの知識と経験をIAEAが独自に評価できる可能性に影響を与えている。

機器とシステムの保守については、ZNPPは以前よりも多くの外部業者を使用しているという。ZNPPはまた、さらに多くの訓練教官を雇用したと報告している。

「人員配置の状況は、原子力安全とセキュリティにとって極めて重要であるため、引き続き注意深く監視している。この目的のために、IAEA専門家は、中央制御室の運転員や他の資格のあるスタッフと意見交換を行う機会も必要としている」とグロッシー事務局長は述べた。

ウクライナの他の地域では、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの原子力発電所、およびチョルノービリサイトのIAEAチームが、原子力安全とセキュリティが維持されていると報告した。チョルノービリに駐在するIAEAチームは本日早朝、新たなチームに交代した。これらの施設に駐在するIAEA専門家らは、定期的に原子力発電所の緊急対応センター、環境モニタリング研究所、オフサイト緊急対応施設を訪問し、現在の状況について意見交換を行うなど、定期的な視察も行っている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-227-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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