ウクライナの原子力発電所の状況 #144


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第228号(現地時間2024年5月16日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、IAEAの新たな専門家チームが本日、軍事紛争中の原子力事故を防止するIAEAミッションの一環として、紛争地帯を移動し、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に到着したと発表した。

新チームは、過去数週間、ZNPPの原子力安全およびセキュリティを監視していたチームと交替した。グロッシー事務局長が20か月以上前にZNPPにおける常駐体制を確立して以降、同サイトに駐在するIAEA専門家チームは今回で19番目となる。

グロッシー事務局長は、「IAEAは必要とされる限り、ZNPPに駐在し続ける。ZNPPの原子力安全およびセキュリティをめぐる状況は、極めて不安定かつ困難なままである。現地に駐在するIAEAチームのおかげで、ZNPPの状況を世界に伝えることができる。この巨大な原子力施設を安全かつセキュアな状態にキープするため、全力を尽くす」と述べた。

ZNPPが直面する潜在的な危険性は常にあり、状況はいつでも突然悪化する可能性がある。過去1週間、IAEA専門家チームは、ZNPP周辺で、さまざまな距離から砲撃やロケット砲、小銃など、軍事行動を示す音を引き続き耳にしている。先週後半には、空襲警報により、24時間ZNPPの建物外への移動が制限された。

原子力発電所では、常に緊急事態へ対応できる態勢の整備が極めて重要である。水曜日(5/15)、IAEA専門家チームは、ZNPPで緊急時訓練を視察した。訓練は、1号機とその安全システムを冷却するための水を供給するスプリンクラー池の一つに接続する配管が損傷したという仮想シナリオに基づくものであった。訓練シナリオの下、プラントスタッフは、安全システムとディーゼル発電機の稼働を確保しつつ、スプリンクラー池に水を汲み上げ、損傷した配管を修理するなどした。

IAEAチームの見解では、訓練はよく組織化され、スタッフは効果的な対応を見せていた。

グロッシー事務局長は、「あらゆる原子力施設にとって、効果的な緊急事態への準備と対応は不可欠である。そのため、定期的な訓練と演習が必要だ。ZNPPが現在直面しているリスクから鑑みると、訓練と演習は特に重要だ」と述べた。

IAEA専門家チームはまた、サイト内の定期的な巡回を継続している。全6基の中央制御室やプラントの原子力安全およびセキュリティに重要な役割と責任を有するスタッフの行動も視察した。しかし、専門家チームは未だ中央制御室のスタッフとの会話は許されておらず、スタッフの経験や専門性を十分に評価できていない。

IAEAチームはまた今週、2号機とその安全システム室を訪問し、蒸気発生器や加圧器のほか、使用済み燃料プール用ポンプが別のポンプから予定どおり切り替わって正常に起動したことを確認した。チームは、ホウ素の漏えいは観察されず、クレーンからの油漏れ以外、同エリアの全体的な状況は満足のいくものであると評価した。

さらに、IAEA専門家チームは、紛争中のプラント保護のための5つの具体的原則を遵守しているか監視するため、立ち入りが許可されているサイト周辺やその他の建物内の巡回を実施した。IAEAチームは、重火器、あるいはドローンがZNPPから発射されたような形跡は確認できなかった。しかし、IAEA専門家チームは未だ、ZNPPのすべてのエリアへの立ち入りが許可されているわけではない。

フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所、そしてチョルノービリ・サイトに駐在するIAEAチームは、先週数日間、空襲警報が鳴るなど紛争が継続するなか、原子力安全およびセキュリティは維持されていると報告している。

リウネのIAEAチームは、先週ウクライナの他の場所にある電力インフラが攻撃されたことにより、プラントに接続する予備送電線が不安定になったと報告した。リウネの4基中2基および南ウクライナの1基で予定されている保守作業および燃料再装荷は、スケジュールどおりに進捗している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-228-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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