ウクライナの原子力発電所の状況 #150
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第234号(現地時間2024年6月23日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長が本日明らかにしたところによると、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)のスタッフの大半が住むエネルホダル市は、市内の変電所が被害を受け、運転停止となったため、週末に16時間にわたって停電に見舞われた。
ZNPPに駐在するIAEA専門家チームは土曜日、被害を受けたエネルホダル市のラドゥガ変電所サイトを訪れ、ZNPPが前日の夕方のドローン攻撃を受けたとしている2台の変圧器のうち1台の被害を確認した。
エネルホダルのもう1つの変電所であるルーチ変電所が破壊されてからわずか数日後の今回の件で、グロッシー事務局長は、ZNPPの原子炉6基への電力供給は今回影響を受けなかったものの、ウクライナの原子力安全およびセキュリティにとっても極めて重要な電力インフラの脆弱性に対する深刻な懸念がさらに深まったと述べた。
電力インフラへのここ数日間の攻撃の結果、IAEAは、ZNPPに隣接するエネルホダル市で電力が復旧した金曜日の午後8時頃から土曜日の正午まで、同市で停電があったとの報告
を受けた。変電所は国の発電、送電、配電システムの重要な部分を構成している。
「誰が背後にいるにせよ、これを止めなければならない。プラントとその周辺に対するドローンの攻撃はますます頻繁になっている。
これは全く容認できないものであり、全会一致で承認された安全の柱と具体的な原則に反する」とグロッシー事務局長は述べた。
水曜日、エネルホダル市の一部と他の地域に電力を供給していたルーチ変電所が破壊された後、ラドゥガ変電所はエネルホダル市の5つの地区に失われた電力の一部を供給していたが、その後、ここも被害を受けた。
IAEA専門家らは、ルーチ変電所の被害状況を調べるためにエネルホダルを訪問してから2日後の昨日、ラドゥガ変電所で電気部品やその他のドローンの残骸、および損傷した変圧器の近くの地面に不発弾があるのを確認した。
現場の当局者らは、変圧器の穴から冷却油が漏れ、変電所が停止したと述べた。流出した油は砂で覆われており、修理が進行中で、午後遅くに完了したと付け加えた。IAEA専門家らは、変圧器自体に油の痕跡は確認しなかった。ラドゥガ変電所はルーチ変電所よりも被害が少なかったようで、火災は発生せず消防士もいなかった。
ZNPPはその後、ラドゥガのバックアップ変圧器を使用してエネルホダルの電力が土曜日の午後に回復したとIAEAチームに通知した。
ルーチ変電所の被害と同様に、ラドゥガからの電力供給停止は、ZNPPでまだ利用可能な 2系統の送電線に直接影響を及ぼしたわけではなかった。ZNPPは、停止中の原子炉の冷却に必要な外部電力を、最後に残った 750kVの主送電線と最後の330 kVの予備送電線から引き続き供給している。
しかし、ラドゥガ変電所の故障は、ZNPPに隣接する工業地帯への電力供給、ZNPPの輸送ユニット、水道水用のポンプ、および周辺地域の外部環境放射線モニタリングステーションの一部に影響を及ぼした。これらのステーションは、土曜日の朝にバッテリー切れで一時的に機能停止したが、電力が回復すると稼働を再開した。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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