ウクライナの原子力発電所の状況 #152


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第236号(現地時間2024年7月3日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、複数のドローンがザポリージャ原子力発電所(ZNPP)周辺を攻撃し、作業員が負傷、森林火災が発生したとZNPPから報告があったことを明らかにした。グロッシー事務局長は、「このような度重なるドローン攻撃は、原子力安全と人々の生命を脅かすものであり、止めなければならない」と述べた。 

ZNPPに駐在するIAEA専門家チームによると、ドローンが隣接する森林に衝突して強風の中で火災が発生したとの報告を受けた後、ZNPPの750kV開閉所付近から黒煙が上がり、爆発音が聞こえたという。開閉所はZNPPのサイト外にあり、消防士による消火活動が行われた。今のところ、専門家チームは今回の攻撃によるサイト内への影響はないと報告している。 

ZNPPの唯一の750kV主送電線が、冷温停止状態の6基の冷却および、原子力安全とセキュリティ維持に必要な外部電力を供給しているため、今回の攻撃は原子力安全にさらなるリスクをもたらしたと言える。 現在、750kV主送電線と330kV予備送電線は利用可能だが、状況は依然として流動的である。

ZNPPによれば、現地時間午前10時40分、多くのZNPPスタッフが居住するエネルホダル近郊でドローン3機の攻撃により、変電所のひとつが破壊され、8人の作業員が負傷、うち1人が病院に搬送された。これにより2つの変圧器のうち少なくとも1つから油が漏れ、変圧器の一部が損傷した。 

この結果、ラドゥガ変電所は現在運転を停止しているが、エネルホダルと隣接する工業地帯への電力供給は維持されている。変電所は、発電、送電、配電システムの重要な部分を形成している。 

ラドゥガおよびルーチの変電所へのドローン攻撃により、エネルホダルが16時間にわたって停電してから2週間も経たないうちに、今回のドローン攻撃が発生した。4月上旬には、ZNPPのサイト内もドローン攻撃を受けており、これは2023年5月にグロッシー事務局長が国連安全保障理事会で設定した原子力施設を守る5つの基本的原則に違反するものである。 

グロッシー事務局長は、「エネルホダルの人々やZNPPの安全にとって非常に危険であるにも関わらず、ドローンによる攻撃が続けられていることは極めて問題だ。直ちに中止されなければならない」と述べた。 

また、今回のドローン攻撃以前から、IAEA専門家チームは過去1週間、ほぼ毎日、軍事活動の兆候を耳にしている。これには、発電所からさまざまな距離での爆発音、銃声、6月30日のプラント付近での2回の爆発音などが含まれている。  

IAEAの専門家チームは、欧州最大の原子力発電所であるZNPPの原子力安全とセキュリティの定期的なモニタリングの一環として、同4号機、環境モニタリング研究所、2つの新たな燃料貯蔵施設、複数の非常用ディーゼル発電機、原子炉安全システムの様々な系統、非破壊検査部門など、サイト全体の巡視を継続した。しかし、空襲警報により、プラントの水道施設への巡視は打ち切られた。 

フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所、およびチョルノービリ・サイトに駐在中のIAEA専門家チームは、先週数日間空襲警報が発令されるなど、戦闘が続いている状況下でも、原子力安全とセキュリティが維持されていることを報告した。 

南ウクライナとリウネのIAEA専門家チームは、先週末に交代を実施。南ウクライナの3基中2基およびリウネの4基中1基で、メンテナンスと燃料交換が計画通りに進展している。 

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-236-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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