ウクライナの原子力発電所の状況 #155
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第239号(現地時間2024年7月26日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は7月26日、軍事紛争の続くウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)における原子力安全とセキュリティについて、主要な安全システム等重要設備への適切な保守活動ですら、依然として非常に困難な状況にあると述べた。
ZNPPに駐在するIAEAの専門家チームは、サイトでの保守活動や、発電所に必要なスペアパーツの入手可能性の確認に重点を置いた視察活動を至近1週間で複数回実施した。
グロッシー事務局長は「ZNPPの極めて脆弱な外部電源状況など、より緊急性の高い問題によって影が薄くなることが多いが、これらは持続可能な原子力安全並びにセキュリティにとって極めて重要な分野である」と述べた。
さらにグロッシー事務局長は「世界中の原子力発電所では、原子炉本体、システム、部品の劣化を防ぐために保守活動を実施している。戦争中に実施することは特に困難を極めるが、定期的かつ包括的に実施しなければ、将来の原子力事故のリスクがさらに高まる可能性がある。我々は引き続き、この問題を注意深く監視していく」と述べた。
IAEA専門家チームは最近、ZNPP3号機の主変圧器の機器の保守作業を視察した。機器は点検のために現在分解されており、メンテナンスが完了次第、試運転が実施される予定だ。
IAEA専門家チームは、ZNPP6号機の原子炉建屋と原子炉補助建屋での燃料交換用クレーンや熱交換器などの計画的なメンテナンス作業も視察した。加えて、電気機器や計装・制御機器のメンテナンス作業も確認した。視察したメンテナンス作業に関して、原子力安全やセキュリティに関する問題は報告されなかった。なお、専門家チームが同機のタービン建屋を訪問した際、以前と同じく建屋西側への立ち入りは許可されなかった。
そのほか、原子力安全とセキュリティ関連で、IAEA専門家チームは、原子力安全の基準に則って実施された4号機の非常用ディーゼル発電機(EDG)の試験を視察した。
IAEA専門家チームは、ZNPPの訓練センターを視察した際、同センターが超音波装置を使用してZNPPで金属の健全性検査を行う専門家にも訓練を行っていることを確認した。金属健全性の非破壊検査(NDT)に工業用の放射線を使用する訓練も含め、同センターは訓練機能を拡大する予定である。
この1週間で、IAEAの専門家チームはサイトからさまざまな距離の爆発音や銃声を耳にし続けている。
今月初めに発生した一連の停電により水の供給にも影響が出ていたが、ZNPPのスタッフの大半が住むエネルホダルでは電力が復旧した。ZNPPに駐在するIAEAの専門家チームは、今週から水道水を通常通り利用できるようになった。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所とチョルノービリ・サイトに駐在するIAEA専門家チームは、紛争が継続しているにもかかわらず、これらの施設では原子力の安全およびセキュリティは維持されていると報告した。IAEA専門家チームは、各サイトで耳にした空襲警報について引き続き報告した。
南ウクライナ原子力発電所の3基の原子炉のうち1基は定期検査と燃料交換を計画通りに完了し、無事に再稼働したが、もう1基の計画停止も終了に近づいている。
先週、南ウクライナ原子力発電所に滞在しているIAEA専門家チームは、発電所サイト外にある330kV開閉所の変圧器の問題により保護装置が作動し、同発電所の2号機が一時的に停止したと報告した。ショートの結果、セラミック製絶縁体が損傷して油漏れが発生、アーク放電により火災が発生した。通電の再開後、原子炉は約17時間後に再起動を行い、電力網への電力供給を開始、停止からわずか24時間後にフル稼働に達した。
リウネと南ウクライナのIAEA専門家チームは先週末に、フメルニツキーの専門家チームは水曜日に交代を実施した。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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