ウクライナの原子力発電所の状況 #159


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第243号(現地時間2024年8月12日)[仮訳]

ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に駐在する国際原子力機関(IAEA)の専門家チームは本日、同プラントの冷却塔を訪れ、11日の火災の影響を確認した。 

火災の影響を直ちに評価するよう要請し、IAEAザポリージャ支援/調査ミッション(ISAMZ)は今朝、冷却塔エリアに立ち入った。IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、調査の結果、ISAMZは火災の主たる原因が冷却塔の基部から始まった可能性は低いと評価したことを明らかにした。

ISAMZが冷却塔を視察した際、塔内部約10mの高さにある散水装置に、損傷が集中している可能性が高いことが判明した。ISAMZは、散水装置へのアクセスを要請し、コンクリート基礎部分から散水装置の底部を観察した。また、ISAMZは冷却塔の土台である冷水槽も確認し、さらに近い距離でのアクセスを要請した。今回の視察では、安全上の懸念から、この2か所への直接の立ち入りは許可されなかった。  

被害を受けた冷却塔を訪問した際、ISAMZは、散水装置に近い、上部の内部設備に焼け跡があることを確認した。また、冷水槽全体に燃えたプラスチックの飛沫と落下したコンクリートの破片が広がっているのを確認した。ISAMZは、これらの飛沫が火災で溶けて落ちたプラスチックメッシュと一致すると判断し、燃えたプラスチックや溶けたプラスチックを含む残骸のサンプルを採取した。ISAMZは火災後に生じている臭気を評価した結果、硫黄臭がないことをふまえ、臭気の原因は燃えたプラスチックである可能性が高いと判断した。 

視察中、タイヤやドローンの残骸は確認されなかった。 

ISAMZは、冷却塔の基部にあるがれきや灰、煤に大きな危険がないことを確認した。 

冷却塔は現在稼働していないため、プラントの安全性には影響がなかった。冷却塔は原子炉の冷却メカニズムの一部としては必要なく、原子炉はすべて冷温停止状態にある。冷却塔のエリアには放射性物質は存在せず、冷却塔はZNPPの原子炉から約1.5㎞離れている。IAEA専門家チームは、冷却塔と原子炉のエリアで放射線モニタリングを実施し、放射線レベルの上昇の兆候がないことを確認した。 

追加情報を収集し、証拠の信憑性を検証するために、ISAMZは、ZNPPスタッフが散水装置の上部を撮影する際に同行することを要請した。  IAEA専門家チームは、これまでの調査結果で決定的な結論を導き出すことができていない。IAEAは、追加調査と散水装置および冷水槽へのアクセスを行った後、全体的な分析を継続する予定である。 

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-243-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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