ウクライナの原子力発電所の状況 #16
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第91号(現地時間2022年8月12日)[一部仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナがIAEAに対し、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の地域での新たな砲撃について報告し、欧州最大の原子力発電所における深刻な原子力安全・セキュリティのリスクが高まっていると訴えていることを明らかにした。
ウクライナによると、この新たな砲撃は、先週のZNPPへの砲撃に続き木曜日(8月11日)の午後に発生し、発電所内の消防署の放射線モニタリング装置などに損害を与えたという。ウクライナは当初予定されていた勤務シフトの変更を中止しなければならないと報告したが、後にスタッフのローテーションは正常に戻ったと伝えている。発電所では死傷者はなく、安全装置にも損傷はなかったという。
ウクライナから提供された情報によると、原子力安全及び核セキュリティにとって重要なシステムは影響を受けていない。しかしグロッシー事務局長は、6基を有する原子力発電所の安全にとって発電所やその近辺への新たな砲撃は深刻な問題であると指摘し、そのような軍事活動をすべて中止するよう繰り返し要求した。
木曜日の砲撃は、グロッシー事務局長が国連安全保障理事会に対してZNPPの安全状況がこの1週間で悪化し、重要な原子力安全、セキュリティ、保障措置の作業の実施のためにIAEAによる専門家派遣が緊急に必要であることを強調した同日に起こった。
保障措置に関しては、IAEAはウクライナで運転中の4つの原子力発電所のサイトから遠隔保障措置データを引き続き受信している。チョルノービリ発電所からの受信には部分的損失の期間があったが、グロッシー事務局長によると、現在は完全に保障措置データ転送が回復している。
ウクライナによるIAEAへの本日付の報告によると、全15基中10基が現在、送電網に接続中。内訳はザポリージャ2基、リウネ3基、南ウクライナ3基、フメルニツキー2基の計10基。
◆IAEA事務局長 国連安全保障理事会において、ザポリージャ原子力発電所における戦闘行為の停止とIAEAによる同発電所の状況の評価の必要性を訴え(現地時間2022年8月11日)[一部仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、国連安全保障理事会にオンラインで出席し、IAEAは、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)において、原子力安全、セキュリティおよび保障措置に関する重要な技術活動を実施し安定化に寄与することができると指摘した。
グロッシー事務局長は、3月からロシア軍に占拠されている同原発の状況について議論するセッションで、8月5日と6日に砲撃を受けた同原発でのあらゆる軍事行動を停止するよう繰り返し求めた。
グロッシー事務局長は安保理に、「ウクライナから提供された最新情報に基づき、IAEA専門家は、砲撃又はその他の最近の軍事行動の結果として、原子力安全に対する差し迫った脅威はないとの予備的評価を行った。しかし、これはいつでも変わり得る」「武力紛争の双方がIAEAと協力し、可能な限り早期にZNPPへのIAEAミッション派遣を認めることを要求する」と訴えた。
IAEAはウクライナとロシアから、発電所の状態、その運転及び損傷について矛盾した情報を受け取っており、現場での検証なしにIAEA専門家はこれらの評価を確証できない。「IAEAが原子力安全及び核セキュリティリスクに関する独立したリスク評価を実施するために、現地へのミッション派遣は不可欠だ」とグロッシー事務局長は述べた。
現地では、IAEAの専門家が、施設の物理的損傷を評価、主要およびバックアップの安全・セキュリティシステムの機能性を判断し、制御室スタッフの労働環境を評価する。同時に、核物質が平和目的にのみ使用されていることを確認するため、緊急の保障措置活動も行い、原子炉の状態と核物質のインベントリを検証する必要がある。また、データの遠隔伝送を継続させるため保障措置機器の保守も行う。
「現地へもミッション派遣は、IAEAの独立した活動にとって有益であるだけでなく、発電所の運営者や規制当局にとっても有益である」とグロッシー事務局長は強調した。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ(ロブノ)、南ウクライナ、ザポリージャ(ザポロジェ)、チョルノービリ(チェルノブイリ)、キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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