ウクライナの原子力発電所の状況 #161


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第245号(現地時間2024年8月17日)[仮訳]  

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)周辺の道路で17日に発生したドローン攻撃によって、ZNPPの原子力安全が悪化していると述べた。

グロッシー事務局長は「ZNPPが直面している原子力安全とセキュリティの危険が再び高まっている。全ての関係者に対し、最大限の自制と、ZNPPを守るための5つの具体的原則の厳格な遵守を改めて求める」と述べた。

17日早朝、ザポリージャ支援/調査ミッション(ISAMZ)は、ドローンに搭載された爆発物がZNPPの防護区域のすぐ外で爆発したとの報告をZNPPから受けた。爆発現場は、ZNPPに必要不可欠な冷却水を供給するスプリンクラー池の近くで、ZNPPに電力を供給する750kV送電線である、ドニプロフスカ主送電線から約100m離れた地点だった。

ISAMZはすぐに現場を視察し、爆発物を積んだドローンによる被害のようだと報告した。死傷者はおらず、ZNPPの設備への影響はなかったが、ZNPPの2つの正門を結ぶ道路には影響を与えた。

ISAMZの報告によると、至近1週間はZNPPの近傍も含む周辺地域での軍事活動が激しかった。ISAMZは、発電所からさまざまな距離で、爆発音、重機関銃やライフルの射撃音、砲撃音を頻繁に確認した。グロッシー事務局長が繰り返し自制を呼びかけているにも関わらず、ZNPP付近での軍事活動が収まる兆しはない。

8月10日、ZNPPはIAEA専門家チームに対し、ZNPPのスタッフの大半が住む近隣都市であるエネルホダル市の配電所・給水所が砲撃を受けたと報告した。この攻撃により変圧器2台が故障し、市内全域で停電が発生した。その影響で、ディーゼル発電機を使用した給水が行われた。8月11日、IAEA専門家チームはZNPPから市内の電力が復旧したとの報告を受けた。

今週初めには、ZNPPの冷却塔の1つで大規模な火災が発生し、原子力安全に対して直ちに脅威はなかったものの、大きな被害が生じている。

今週、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所とチョルノービリ・サイトに駐在するIAEA専門家チームは、頻繁な空襲警報とドローンによる攻撃を確認した。

グロッシー事務局長は「原子力発電所は、技術的な故障、人的ミス、極端なものを含む外部事象に対して耐性を持つように設計されているが、世界の他のエネルギー施設と同様に、直接の軍事攻撃に耐えられるようには作られておらず、耐えられるはずもない」と述べ、「今回の攻撃により、紛争地域におけるエネルギー施設の脆弱性と、状況の監視を継続する必要性が浮き彫りになった」と語った。

さらに、グロッシー事務局長は今週、ロシア領内で稼働中の原子力発電所への軍事活動の接近を含む、最近の状況について協議を続けた。グロッシー事務局長は、原子力発電所への視察を含め、状況を評価する準備があることを明らかにした。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-245-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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