ウクライナの原子力発電所の状況 #165


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第249号(現地時間2024年9月13日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、IAEAのスタッフがサイト付近で軍事行動の音を頻繁に耳にするなど、ウクライナの原子力安全およびセキュリティの状況が紛争により、依然脆弱な状態にあることを明らかにした。

グロッシー事務局長は、「この悲劇的な戦争が始まって3年になるが、原子力安全およびセキュリティに対する危険が未だ現実にある。我々は、原子力事故を防ぐ努力を継続していく決意である」と強調した。

ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)では今週、IAEAチームは9月7日にドローン攻撃が報告された、プラントから4㎞離れた輸送作業場への立ち入りを要請し、許可された。チームは、屋根に穴が開いていることやトラック2台がわずかに衝撃を受けていることを確認した。原子力安全およびセキュリティに関連する被害はなかった。

さらに、IAEAチームは、4号機の電気および計装制御室、1,2号機のタービン建屋の巡回を実施した。タービン建屋の西側部分への立ち入りはまたも許可されなかった。

今週初め、IAEAチームは、9月末に発効する予定の新しい緊急時計画と来週予定されている緊急時訓練について、ZNPP側と議論した。ZNPPで以前行われた訓練と同様、IAEAチームは訓練を視察する予定である。

フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所、およびチョルノービリ・サイトに駐在するIAEAチームは、過去1週間のうちの数日間、空襲警報が鳴るなど紛争が継続しているなか、原子力安全およびセキュリティは維持されていることを報告した。

月曜日、チョルノービリ・サイトの330㎸の外部送電線のうちの1系統が、技術的な問題により約40分切断されたが、すぐに復旧した。翌日、リウネ原子力発電所では、8月後半に攻撃を受けて以来切断されていた750㎸の送電線が復旧した。

南ウクライナ原子力発電所では、過去1週間で2回、9月5日と12日に、IAEAチームはドローンと銃声を耳にし、避難を余儀なくされた。このことは、ウクライナの原子力発電所が未だリスクにさらされていることを浮き彫りにするものである。先週の事象に続き、プラントおよびウクライナ国家原子力規制局(SNRIU)は、ドローンがプラント近くに飛来したことを明らかにした。IAEAチームはこの事象後、サイトで原子力安全あるいはセキュリティに関連する問題を確認していない。

昨日、SNRIUはIAEAに対して、早朝、フメルニツキー原子力発電所周辺地域でドローンが飛来していることを確認した、と報告した。

IAEAは、ウクライナの原子力安全およびセキュリティを維持するために、包括的な支援プログラムを引き続き実施した。紛争開始以降、合計63件の納入を実施、これまでに1,100万ユーロを超える機材がウクライナのさまざまな組織に届けられている。

この1週間、チョルノービリ・サイトには、スタッフの生活状況の改善のため、ベッドが納入された。さらに、原子力発電所への、また原子力発電所からの信頼できる電力供給の確保に向け、エネルギー省を支援するための機器やその他の物資が納入された。これは、ウクライナの送配電事業者の必要性に応じてエネルギー省が要請したもので、支援物資には、電線やスイッチ、変電所や開閉装置の保護・制御用マイクロプロセッサー装置などが含まれる。これらの支援は、フランス、日本、ニュージーランド、ノルウェーの資金援助によるものである。

その他の動きとして、IAEAは、原子力安全に重要な系統インフラの状況を評価するための作業の一環として、初めてウクライナの変電所を訪れた。IAEAチームは、キーウスカ(Kyivska)サイトを訪れ、以前に受けた損傷を確認したが、修理後、変電所はフル稼働に戻っている。

外部電源への安定したアクセスは、グロッシー事務局長が2年半前に概説した紛争時の原子力安全およびセキュリティを確保するための7つの不可欠な柱の一つである。

グロッシー事務局長は、「運転中の原子力発電所の安全性は、安定した系統接続に依存しているため、変電所の状況を評価することは、ウクライナにおける我々の仕事の重要な新しい要素である。ここ数週間から数か月で、この点において状況はますます不安定になっている。原子力安全および関連インフラの専門家として、変電所の状態を直接把握することが重要である」と述べた。

IAEAは既に、ウクライナのすべての原子力発電所にスタッフ(チーム)を常駐させ、軍事紛争中の原子力安全およびセキュリティの維持に貢献している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-249-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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