ウクライナの原子力発電所の状況 #169


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第253号(現地時間2024年10月7日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、ロシアとウクライナの両国から、先週ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)のスタッフの大半が住む都市で起きたある人物の暗殺について報告を受けたことを明らかにした。 

コロツキー氏と身元が判明した人物が、ZNPPから数km離れたエネルホダルで4日朝に起きた自動車爆発で死亡したと報じられている。ロシアはIAEA宛ての書簡で、同氏はZNPPで「核セキュリティ確保の責任を負う、主要なスタッフの一人」であったと断言する一方、ウクライナはIAEAに対し、同氏はもはやZNPPのスタッフではなかったと伝えた。 

また、IAEAは、ウクライナの軍事諜報機関が同日発表した公式声明で、ロシアが2022年3月にZNPPを掌握した後のこの人物の行動が、今回標的にされた理由だと示唆していることも認識している。さらに、同機関は破壊された車の画像を投稿し、他の人々も「報復」を受ける可能性があることを示唆した。 

ウクライナはIAEAとのその後のやり取りで、「民間人は攻撃していない」と述べた。ウクライナは、今回の爆発への関与を肯定も否定もしなかった。 

ロシアはIAEA宛ての書簡で、コロツキー氏はZNPPの「許認可部門のトップ」であり、今回の攻撃はウクライナによる「恐ろしい犯罪」だと述べた。 

グロッシー事務局長は、IAEAには今回の事件を調査する法医学的能力や権限はないが、軍事紛争中の原子力事故を防ぐためには、原子力安全とセキュリティを維持することが依然として最も重要であると改めて強調した。この極めて重要な目的のため、IAEAは2022年3月に、すべてのIAEA加盟国から支持されている、原子力安全とセキュリティの維持に不可欠な7つの柱を確立した。 

3番目の柱では、「運転員は原子力安全・セキュリティ上の義務を果たし、不当な圧力から解放された意思決定ができる能力を有していること」と規定されている。 

グロッシー事務局長は「原子力発電所のスタッフを標的にすることは、原子力安全とセキュリティ全体にとって基礎となるこの柱への明らかな違反となる」と述べた。 

その上でグロッシー事務局長は、「ZNPPのスタッフに影響を及ぼす可能性のある、さらなる報復措置を示唆するいかなる発言も受け入れられるものではなく、IAEAが確立した安全の柱に反するものだ」と述べ、「そのような脅迫は、政治的・軍事的状況に責任を負っていないスタッフが職務を適切に遂行するための最低限の労働条件を否定している」と指摘した。 

グロッシー事務局長は、軍事紛争中の最大限の自制を改めて求め、ZNPPの状況に関連した問題の対処のための、ZNPPのスタッフを標的としたいかなる行動も、原子力安全とセキュリティに直接影響を与えるため、中止しなければならないと述べた。 

グロッシー事務局長は、「この紛争中に、国境を越えた放射線による被害を伴う原子力事故の脅威を回避する唯一の方法は、原子力安全とセキュリティに不可欠な7つの柱と、ZNPPを守るための5つの具体的原則を全面的に尊重し、遵守することだ」と述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-253-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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