ウクライナの原子力発電所の状況 #17


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 92号(現地時間2022819日)[一部仮訳]

欧州最大のザポリージャ原子力発電所(ZNPP)をめぐって緊張が高まる新たな兆候が出てきたことを受け、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ZNPP地域において軍事行動を最大限抑止するよう求めるさらなる緊急声明を発表した。

ZNPPの原子力安全とセキュリティの状況の悪化についてグロッシー事務局長が国連安全保障理事会に説明して以来わずか1週間後のことであり、グロッシー事務局長は、6基の原子炉へのさらにエスカレートした行為は深刻な原子力事故につながり、ウクライナやその他の地域の人々の健康と環境に重大な影響を及ぼす可能性があると警告した。

深刻な状況に鑑みグロッシー事務局長は、基本的な安全、セキュリティ及び保障措置の活動を現場で行うためにIAEAのミッションを派遣する必要性を改めて表明。ミッションを可能な限り早期に派遣するために、あらゆる当事者と積極的に協議している、と指摘した。紛争中にウクライナに派遣された過去2回のIAEAミッションと同様、グロッシー事務局長自身がこの同ミッションを主導するという。

グロッシー事務局長はまた、IAEAミッションの派遣を支持するとの、ウクライナとロシアの双方の最近の声明を歓迎した。

グロッシー事務局長は、最近IAEAが受信した、ZNPPに関連する新たな原子力安全とセキュリティのリスクの可能性を示唆するメディア報道及びその他の情報に応えて、本日、最新の声明を発表したが、これは、砲撃が緊急事態の対応活動に影響を与える等(第89号 2022年8月9日参照)、発電所にいくつかの損傷を引き起こし、現地の状況について広く警戒を呼び起こしてから、2週間しか経過していない。

グロッシー事務局長は「この極めて危険で不安的な状況の中で、世界最大級の原子力発電所の安全性とセキュリティをさらに危険にさらすような新たな行為が行われないことが極めて重要」「緊張を緩和し、原子力の安全及びセキュリティを確保し、住民及び環境に対する放射線の影響を防止するために必要な措置をとることが緊急に必要。IAEAはこの点において不可欠な役割を果たすことができる」と表明した。

IAEAは、半年前に紛争が始まって以降、ZNPPを訪問できていない。ZNPPは3月初めからロシア軍の管理下に置かれており、ウクライナ側のスタッフが発電所の運転を継続している。

これとは別に、ウクライナはZNPPの規制認可を「変更」し、1、2号機の原子炉を冷温停止状態に維持することを決定したとIAEAに伝えた。現在は5、6号機のみが稼働している。IAEAは、原子炉の運転状況並びに原子力安全及び核セキュリティの状況について、監視を継続する。

ウクライナによるIAEAへの本日付の報告によると、全15基中10基が現在、送電網に接続中。内訳はザポリージャ2基、リウネ3基、南ウクライナ3基、フメルニツキー2基の計10基。

IAEAは、ウクライナの4つの原子力発電所のサイトとチョルノービリ原子力発電所から、遠隔保障措置データを引き続き受信している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-92-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


グテーレス国連事務総長による開会挨拶:ゼレンスキー・ウクライナ大統領、エルドアン・トルコ大統領との共同記者会見(2022818於ウクライナ・リビウ)

Secretary-General’s opening remarks to the Press at Lviv, Ukraine Press Conference

18 August 2022

(原子力関連部分のみ仮訳)

私は、ザポリージャにあるヨーロッパ最大の原子力発電所とその周辺で展開されている状況を非常に懸念している。

原子力発電所の物理的健全性、安全性、またはセキュリティを危険にさらす可能性のあるいかなる行動も避けるために、常識が優先されなければならない。

原子力発電所は、軍事作戦の一部として利用するものではない。

ザポリージャ原子力発電所を純粋な民間インフラとして再建し、地域の安全を確保するための合意が早急に必要とされている。

IAEAと緊密に連絡を取りながら、ロシアとウクライナの双方が同意すれば、キーウからザポリージャ原子力発電所へのIAEAミッションを支援するためのロジスティクスとセキュリティの能力がウクライナにはあると、国連事務局は評価している。

軍事装備とその関係者は原子力発電所から撤退すべきである。

現場への部隊や装備のさらなる配備は避けなければならない。

その地域は非武装化される必要がある。

はっきり言おう。ザポリージャ原子力発電所へ損傷を与える可能性のある行動は自殺行為である。

https://www.un.org/sg/en/content/sg/speeches/2022-08-18/secretary-generals-opening-remarks-the-press-lviv-ukraine-press-conference


◆ロシアに対するウクライナ南部ザポリージャ原子力発電所を含め、ウクライナ全土からの軍部隊の即時撤退を求める欧州連合(EU)の全加盟国と日米など計42カ国による共同声明

(8月14日欧州時間発表)

https://www.eeas.europa.eu/delegations/vienna-international-organisations/ukraine-joint-statement-situation-zaporizhzhia_en?s=66



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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