ウクライナの原子力発電所の状況 #171
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第255号(現地時間2024年10月18日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に駐在するIAEA専門家チームから、ZNPP付近での日常的な軍事活動や爆発の発生が引き続き報告されていることから、この継続的な状況は、依然として紛争地域の中心にあるZNPPが根強い脅威に直面している、との懸念を表明した。
至近1週間でZNPPへの被害は報告されておらず、IAEA専門家チームは、プラントの状態の評価、ならびに継続的なメンテナンスおよび訓練活動に注力している。
IAEA専門家チームは、ZNPP全域で定期的な視察を実施。4号機のポンプステーションでは、ZNPPの放水路と取水路の間の冷却水の流れを維持するために使用されている循環ポンプが現在も稼働していることを確認した。2023年6月のカホフカ・ダムの破壊以降、徐々に水位が減少しているZNPP冷却池は、循環ポンプに依存する状況となっている。
IAEA専門家チームは、ZNPPのメンテンナンス状況を評価する中で、2024年8月の火災で被害を受けた冷却塔を今週視察し、メンテナンス作業が行われていないことを確認した。ZNPPによると、外部業者の支援を受けて被害の範囲を確認する予定である。
IAEA専門家チームは、福島第一原子力発電所の事故後に行われたストレステスト後に導入され、サイトで使用可能な6台の可搬型ディーゼル発電機のうち、2台が別の場所に移されたとの報告を受けた。1台は現在、最近被害を受けたザリア変電所で、もう1台はエネルホダル市の給水ポンプステーションで使用されている。
今週、IAEA専門家チームは ZNPP のスタッフの数に関する最新情報を得た。約 5,000人のZNPPのスタッフのうち、70 人の指導教官を含む 130 人がトレーニングセンターで働いている。目標は、ZNPPの人員を6,000人に増やすことだ。
IAEA専門家チームはサイトと近隣のエネルホダル市で放射線モニタリングを実施し、放射線量が正常であることを確認した。
一方、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所、そしてチョルノービリ・サイトに駐在するIAEA専門家チームは、至近1週間のうち数日間に渡って空襲警報が発令されたが、原子力安全とセキュリティは維持されている、と報告した。フメルニツキーの専門家チームは、この1週間で2度避難した。
ウクライナ国家原子力規制局(SNRIU)はIAEAに対し、10月10日に南ウクライナ原子力発電所の監視区域内でドローンの飛行を3回確認し、10月14日の夕方には5回確認したと報告した。
リウネ原子力発電所では、2系統の750kV送電線のうち、1系統にメンテナンスが実施され、先週中に利用可能となった。さらに、5系統の110kV送電線のうち、1系統で計画的なメンテナンスが実施されているという。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各専門家チームは、メンバーの交代を無事に終えている。 また今週、抗原コンボ検査キットが、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所とチョルノービリ・サイト、およびエネルゴアトムとSNRIUに届けられた。これはIAEAの医療支援プログラムによる6回目の調達であり、ウクライナの原子力安全とセキュリティの維持を支援するIAEAの包括的支援プログラムによる70回目の調達である。これは、日本からの資金援助によって実施された。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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