ウクライナの原子力発電所の状況 #174


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第258号(現地時間2024年11月7日)[仮訳] 

国際原子力機関(IAEA)の新たな専門家チームが今週、軍事紛争の最前線を越えてウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に赴任した。軍事紛争中の原子力事故防止を支援するIAEAの取組みの一環として、この数週間にわたりZNPPで原子力安全とセキュリティを監視してきた専門家と交代する。 

これは、ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長が2022年9月にIAEAの駐在体制を敷いて以来、ZNPPに着任する25番目のチームである。専門家チームの駐在は、その数か月後には、ウクライナの他の4つの原子力関連施設、つまりフメルニツキー、リウネ、南ウクライナの原子力発電所とチョルノービリ・サイトでも実施された。 

至近1週間の中で、ウクライナの現在の電力供給の大半を担っている運転中の3つの原子力発電所のIAEA専門家チームも、無事交代を完了した。 

グロッシー事務局長は、「ウクライナ国内外の人々の健康と環境に深刻な影響を与える原子力事故の脅威を回避するために、IAEAは必要な限りこれらの施設に駐在するつもりだ。原子力安全とセキュリティの状況は依然として非常に厳しいため、IAEA専門家チームはこれらの施設すべてで状況を安定させる重要な役割を引き続き担っている」と述べた。 

IAEA専門家チームは日々の業務において、5か所の原子力施設の原子力安全とセキュリティを評価し、市民と国際社会に関連情報を提供するとともに、原子力安全とセキュリティに関連する機器や専門知識、助言などの包括的な技術支援と援助プログラムをウクライナに提供している。IAEAはまた、医療支援も行っている。 

ZNPPでは、先週の報告の通り、水漏れが発生していた導圧管の溶接と放射線検査が無事完了し、11月2日に1号機は冷温停止状態に戻った。原子力安全に直接的な影響はなかったが、ZNPPは今回の不具合の根本的な原因の分析を続けている。 

IAEA専門家チームは至近1週間にわたり、原子力安全とセキュリティに関して大きな懸念が残るZNPPの現在の電源状況を調査した。専門家チームは、10月下旬の高電圧試験をクリア後、2台のバックアップ用変圧器が運転を再開し、残る4台のバックアップ用変圧器のメンテナンスが年末までに実施される予定との報告を受けた。 

 IAEA専門家チームとZNPPは、寒い冬に向けた発電所の準備についても協議し、6基の原子炉すべてが冷温停止状態を維持し、代わりにサイト内のボイラーで必要な熱が供給されることを確認した。 

IAEA専門家チームは4号機の原子炉と格納容器を視察したが、原子力安全およびセキュリティ上の問題は確認されなかった。また、1号機と5号機の非常用ディーゼル発電機数台も視察した。 

IAEA専門家チームは先週、ZNPPから少し離れた場所での爆発音を頻繁に耳にしている。ZNPPへの被害は報告されていない。  フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所とチョルノービリ・サイトのIAEA専門家チームは、至近1週間のうち数日間にわたって空襲警報が発令されるなど、軍事紛争の影響はあるものの、原子力安全とセキュリティは維持されていると報告している。 

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-258-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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