ウクライナの原子力発電所の状況 #176
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第260号(現地時間2024年11月17日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、ウクライナ全土で広範囲にわたって軍事活動が展開され、いずれも同国のエネルギーインフラが標的とされたと報じられたことを受けて、運転中の原子力発電所の出力を下げる予防措置が今朝実施されたことを明らかにし、原子力安全とセキュリティが損なわれていると指摘した。
グロッシー事務局長は、ウクライナの国家規制当局からの情報を引用して、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの3つの原子力発電所は直接的な影響を受けず、停止もしなかったが、これらの発電所が依存しているいくつかの変電所は、今回の攻撃でさらなる被害を受けた、と述べた。4つの変電所との主送電線が切断されており、現在、国内で運転中の9基の原子炉のうち、フル稼働しているのは2基のみである。
攻撃の影響について、グロッシー事務局長は同規制当局のトップに対して、IAEA専門家チームは、8月の攻撃による被害を評価するため、9月と10月にウクライナ全土の原子力発電所外にある変電所7か所を訪問したが、本日の軍事活動を受けて、さらなる訪問が必要かどうかを評価することを伝えた。
原子力発電所に駐在するIAEA専門家チームは防空活動の音を聞き、空襲警報が鳴る中で避難した。フメルニツキー原子力発電所で、専門家チームは大きな爆発音を耳にした。リウネ原子力発電所では、2系統の330kV送電線が利用できなくなったと専門家チームは報告した。
原子力発電所は、発電した電力を送電するため、また原子炉冷却用に外部電源から電力を受け取るために、信頼性の高い送電網との接続を必要とする。軍事紛争の間、送電網の脆弱性が高まっていることは、原子力安全とセキュリティにとっての大きな課題の1つである。
3サイトの原子力発電所で現在運転中の9基の原子炉のうち、6基は午前中に、最大出力の40%強から90%超までの範囲で出力を低下させた。現時点でフル稼働しているのは2基のみで、1基はメンテナンスのため停止中である。すべての原子力発電所は、引き続き外部電力の供給を受けている。
グロッシー事務局長は「ウクライナのエネルギーインフラは極めて脆弱で、原子力安全とセキュリティに直接的な影響を及ぼしている」と述べ、「被害の全容はまだ確認中だ。この重要な時期に、原子力安全とセキュリティ維持に不可欠な7つの柱、特にすべての原子力サイトで送電網からの安全な外部電力供給がなければならないとする4番目の柱を遵守することの重要性を改めて強調する」と続けた。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)