ウクライナの原子力発電所の状況 #178
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第262号(現地時間2024年11月28日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、ウクライナで運転中の原子力発電所3サイトにおいて、今朝、出力を低下させたことを明らかにした。軍事紛争中のエネルギーインフラへの新たな攻撃により、原子力安全がさらに危険にさらされたことによるもの。
グロッシー事務局長によると、ウクライナ国内で軍事活動が広範囲に及び、空襲警報が発令されている中、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所が予防措置として出力を低下させたのは、至近2週間で2度目である。また、ウクライナに派遣されているIAEA専門家チームのうち、2チームは避難を余儀なくされた。
運転中の原子炉9基は、いずれも出力を低下させている。リウネの原子炉1基は送電を停止した。フメルニツキーでは、2系統の送電線との接続を喪失したが、外部電源との接続は途切れていない。
グロッシー事務局長は「ウクライナのエネルギーインフラは極めて脆弱で、原子力安全が大きなリスクにさらされている」と述べ、「改めて、主要な原子力関連施設などが立地する地域では、軍事活動の最大限の自制を求める」と強調した。
原子力発電所への直接的な被害の報告はないが、IAEAはウクライナから、外部電源と原子力発電所を結ぶ送電線が使用する変電所が、再び攻撃の影響を受けているとの報告を受けた。
IAEAが原子力安全とセキュリティにとって重要と判断したいくつかの変電所は、今年8月など過去の攻撃でも被害を受けている。
IAEA専門家チームは、8月の攻撃後の状況を評価するため、9月と10月にウクライナ全土の原子力発電所の敷地外にある変電所7か所を訪問し、甚大な被害を確認した。これを踏まえて、グロッシー事務局長は先週のIAEA理事会で「ウクライナの原子力発電所に信頼性の高い外部電力を供給する送電網の能力が、大幅に低下した」との見解を示した。
グロッシー事務局長は本日、「IAEAは、原子力安全とセキュリティに不可欠な施設や送電線の被害の範囲を引き続き確認、評価する」と述べ、「IAEAは、この悲惨な戦争の中で原子力事故のリスクを減らすために、引き続き全力を尽くす」と述べた。
原子力発電所は、発送電および原子炉冷却に必要な外部電力を得るために、信頼性の高い送電網への接続が不可欠である。軍事紛争の間、送電網の脆弱性が高まっていることは、原子力安全とセキュリティにとっての主要な課題の1つである。
グロッシー事務局長は、原子力安全とセキュリティ維持に不可欠な7つの柱を遵守することの重要性を繰り返し強調しており、その中で、すべての原子力サイトで、外部電源(送電網)からの電力が確実に供給されなければならないと定めている。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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