ウクライナの原子力発電所の状況 #181


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第265号(現地時間2024年12月12日)[仮訳]   

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は本日、IAEA専門家チームは引き続き、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に交代で駐在することを明らかにした。今週、IAEAの装甲車両1台がドローン攻撃を受けていた。

2年以上前のミッション発足以来、ZNPPに派遣された26番目のIAEA専門家チームは、10日に到着後すぐに、それまで数週間駐在していた専門家チームと交代し、ZNPPの原子力安全とセキュリティの監視と評価の作業を開始した。

前線の引き継ぎ地点で、任務を終え出発を待つ、専門家チームを迎えに行く車列中のIAEAのロゴが明確に確認できる公用車を狙ったドローン攻撃は、10日遅くに発生した。攻撃による負傷者はいなかった。

グロッシー事務局長は「今回の攻撃は、戦闘地帯で重要な原子力安全・セキュリティ業務を遂行するIAEAのスタッフが直面している潜在的な危険を明確に浮き彫りにするものだった。ZNPPの安全維持に協力してくれるスタッフに心から感謝する」と述べた。

使用されたドローンは衝突時に爆発するよう設計されており、事件の調査に役立つ痕跡となる破片は残っていなかった。

グロッシー事務局長は「誰が攻撃を仕組んだにせよ、仕組んだ側は何が行われるかを正確に把握していた。攻撃されたのはIAEAの車両で、我々を脅迫する意図は明らかだった。だが、我々はこの恥知らずで嘆かわしい攻撃に屈することはない。必要とされる限り留まり続け、この重要な任務を継続する」と述べた。

IAEAは、ZNPPにおいて、安全システム、特に2号機と6号機のシステムのメンテナンスの監視を続けている。

先週、ZNPPは9基の可搬式ディーゼルボイラーの一部を再び活用し、冬の間、ZNPPおよびZNPPのスタッフの大半が住むエネルホダル市の地域暖房システムに熱を供給した。

これとは別に、IAEA専門家チームは、3基の原子炉のタービン建屋に隣接して設置された3台の新しい可搬式ディーゼル発電機を視察した。ZNPPは専門家チームに対し、これらの新しい発電機は、福島第一原子力発電所事故後の対策の一環であり、またウクライナが以前に実施した対策への追加措置で、ロシアの規制にも準拠していると伝えた。

3台の新しい可搬式の発電機は、軍事紛争開始以来8回発生している外部電源喪失時に、サイト内の電力供給することを目的に設置された、サイト内の20台の固定式非常用ディーゼル発電機に加えて配備されたものである。2022年後半、ZNPPは別の7台の移動式ディーゼル発電機を受領したが、接続が切断されたため現在は使用されていない。

IAEA専門家チームは、至近1週間、ZNPPから少し離れた場所から毎日爆発音を耳にしている。ZNPPへの被害は、専門家チームに報告されていない。

軍事紛争の影響にもかかわらず、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所とチョルノービリ・サイトに駐在するIAEA専門家チームは、原子力安全とセキュリティは維持されていると報告した。

フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各発電所では、9基すべてが稼働しており、ウクライナの電力網に電力を供給している。しかし、ウクライナの電力インフラに対する最近の攻撃を受けて、一部の外部送電線が未だ切断されており、電力網の制限により2基がフル稼働できていない。

IAEA専門家チームは週を通して空襲警報の発令を報告し続けており、フメルニツキー原子力発電所の専門家チームは一度避難を余儀なくされた。南ウクライナ原子力発電所の専門家チームは、発電所から数km離れた場所で複数のミサイルとドローンが検知されたと報告を受けた。

IAEAは、原子力安全とセキュリティを支援する包括的支援プログラムの一環として、至近1週間でウクライナへの新たな調達を3回手配し、合計89件となった。 ウクライナの水文気象センターとウクライナ非常事態庁の水文気象機関は、ビデオ会議用機器を受領し、一方、チョルノービリ近郊のスラブティチ市立病院とリウネ原子力発電所近郊のヴァラシュ病院には、酸素濃度計、血圧計、除細動器、患者用モニター機器、血糖値測定器などの医療機器が届けられた。これらは、ベルギーと米国の資金提供によって行われた。    

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-265-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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