ウクライナの原子力発電所の状況 #182


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第266号(現地時間2024年12月13日)[仮訳]   

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、ウクライナでエネルギーインフラに対する新たな攻撃があり、大半の原子力発電所が13日早朝から再び出力を落として運転していることを明らかにした。軍事紛争時の原子力安全への継続的なリスクが、より一層浮き彫りになっている。

グロッシー事務局長は、ウクライナ国内で軍事活動が広範囲にわたり展開され、空襲警報が出される中、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所の複数の原子炉が出力を下げたのは、この1か月足らずの間に3度目であると述べた。

ウクライナに派遣されたIAEA専門家チームの1つは避難を余儀なくされ、そう遠くない距離から爆発音を耳にしたと報告した。さらに、南ウクライナ原子力発電所に駐在する専門家チームは、サイトから約300m離れた地点で軍の飛行物体を目撃したとの報告を受けた。

グロッシー事務局長は「ウクライナに派遣された専門家チームは、ここ数か月の頻繁な軍事攻撃の結果、ウクライナの電力インフラの不安定性が高まり、それが原子力発電所の安全な稼働にどのような悪影響を与えているかを目の当たりにしている」と述べた。

ウクライナの原子力発電所で稼働している原子炉は合計9基で、そのうち5基は今朝、国営系統運用事業者からの指示に従って出力を下げた。そのうち1基は一時的に電力網との接続が切断され、別の2基は、11月下旬に発生したウクライナのエネルギーインフラに対する軍事攻撃を受けて、すでに通常のフル稼働を下回る出力で稼働していた。

影響を受けた原子炉のうち3基はその後、通常運転に戻った。

本日の軍事攻撃と電力網の混乱により、原子力発電所が直接被害を受けたという報告はなく、新たに送電線が切断されたという報告もない。11月28日のエネルギーインフラに対する攻撃以降、一部の送電線は切断されたままである。

原子力発電所は、発送電や原子炉冷却用の外部電力を受電するために、信頼性の高い送電網への接続を必要とする。電力インフラの脆弱性が増すということは、軍事攻撃によって送電網に大きな変動が生じる可能性があることを意味し、安全システムの運用に影響を及ぼし、深層防護を脆弱化させ、原子力安全に影響を及ぼす可能性がある。外部電源が安定して利用できることは、軍事紛争を通じて、原子力安全とセキュリティにとって引き続き重要な課題の1つである。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-266-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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