ウクライナの原子力発電所の状況 #187


 ◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第271号(現地時間2025年1月23日)[仮訳]  

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に駐在するIAEA専門家チームが、至近1週間にサイト外からの爆発音を頻繁に耳にしており、軍事紛争中の原子力安全とセキュリティに対する継続的な危険がさらに浮き彫りになっていると述べた。

IAEA専門家チームは、至近数日間にZNPPからさまざまな距離で軍事活動の音を複数回確認している。ZNPP自体に被害は報告されていない。IAEAが2022年9月にZNPPにおける継続的な駐在を表明して以降、ZNPP付近で軍事活動の音を耳にすることは珍しくはなくなっているが、ここ数週間はほぼ毎日発生している。

グロッシー事務局長は「これまでの約3年間、IAEAはZNPPやウクライナの他の場所での原子力事故を防ぐために全力を尽くしてきた。事故は発生していないものの、状況は改善しておらず、依然として不安定なままである。ZNPPを含むウクライナの原子力安全とセキュリティについて深刻な懸念を抱いており、IAEAの任務は当分終わらない」と語った。

原子力安全とセキュリティに関連する動向を監視する継続的な任務の一環として、IAEA専門家チームは、4基の原子炉の中央制御室と緊急時制御室、1つのタービン建屋を含むサイト内の視察を継続し、発電所の原子力安全に関わるさまざまなメンテナンス活動を確認、議論を行った。

IAEA専門家チームは、ZNPPが2024年末に納品されたものと同様の新しい移動式ディーゼル発電機3台を調達中であると報告を受けた。これらは、外部電源が喪失した場合にサイト内に電力を供給するための、サイト内の固定式非常用ディーゼル発電機20台に追加される形で納入される。

また、ZNPPは、放射性液体廃棄物の処理に必要な蒸気を供給するため、ディーゼル蒸気発生器4台を10日間稼働させたと発表した。これらの蒸気発生器は1年前に設置された。

ウクライナ国内では、稼働中の3つの原子力発電所(フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ)とチョルノービリ・サイトで空襲警報が数回発令された。フメルニツキー原子力発電所では、IAEA専門家チームのメンバーが空襲警報の影響で、数日のうちに3回、居宅に避難した。

フメルニツキー、南ウクライナの両原子力発電所、およびチョルノービリ・サイトで、IAEA専門家チームは、発電所から2〜30kmの距離でドローンが確認されたと報告を受けた。

活発な軍事活動にもかかわらず、ウクライナで稼働中の原子炉9基は今週フル稼働し、寒い冬季期間中、必要な電力を安全に供給している。

IAEAは、ウクライナの原子力安全とセキュリティを支援する包括的支援プログラムを継続して実施している。先週、チョルノービリ・サイトは原子力安全システムを強化するための機器を受け取った。軍事紛争開始以来、IAEAが行った物資の調達は、104回となり、今回は英国からの資金提供によって実施された。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-271-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)