ウクライナの原子力発電所の状況 #188
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◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第272号(現地時間2025年1月30日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は来週、ウクライナ高官との協議のためキーウを訪問し、軍事紛争中の原子力事故防止に向けた、IAEAの継続的な取組みについて議論する。
およそ3年前の軍事紛争開始以降、グロッシー事務局長率いるミッションがウクライナを訪問するのはこれで11度目。ウクライナの原子力安全およびセキュリティ確保支援に向けた、IAEAの揺るぎない姿勢を示すものである。
グロッシー事務局長は2/4に予定されているキーウ訪問を前に、「このおぞましい戦争が続く限り、IAEAはウクライナに寄り添い続け、極めて困難な状況下で原子力安全およびセキュリティを支援するため、あらゆることに全力投球で臨む。全体的な状況は未だ予断を許さない状況にあるため、我々の活動は引き続き重要だ」と強調した。
過去1週間、ウクライナの原子力発電所に駐在するIAEAチームは、各サイトが直面する根強いリスクについて報告を継続しており、サイト付近での軍事行動の兆候が数多く見られる状況にある。
ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)において、IAEAチームは毎日プラント周辺での爆発音を耳にしており、今朝は近距離で複数の爆発音があった。プラント自体への被害は報告されていない。
外部電源との接続に関連し、引き続き過酷な状況を浮き彫りにするものとして、ZNPPに残る唯一の750kV主送電線が水曜日、保護システムの作動により切断された。そのため、原子炉冷却やその他の安全機能維持に必要な電力を、再び330kV予備送電線のみに依存せざるを得ない状況となった。
IAEAチームは、ZNPPの巡回を継続して実施しており、昨年末以降、初めて750kV開閉所も訪問した。チームのメンバーは、電圧安定装置のメンテナンスが完了したことを確認し、今後のメンテナンス作業についてZNPPと協議した。
先週金曜日、チームは、5号機の原子炉格納容器建屋内で結露(フロアや壁)を確認した。ZNPPはこの問題を確認しており、IAEAチームは近日中に、さらに調査を実施する予定である。チームはまた、安全システム室は良好な状態にあると評価した。
ウクライナのその他の原子力発電所およびチョルノービリ・サイトに駐在するIAEAチームは連日、空襲警報を報告し続けている。フメルニツキー、南ウクライナ、チョルノービリでは、サイトからさまざまな距離でドローンが検知されているという。フメルニツキーでは、チームは火曜日の朝、サイト内で避難を実施した。
南ウクライナでは、IAEAチームは、750kV送電線2系統のうちの1系統が、何らかの軍事行動の影響により、水曜日の朝、切断されたとの報告を受けた。その結果、3基中1基が一時的に出力を落としたが、同日遅くに通常運転に戻った。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナおよびチョルノービリに駐在するIAEAチームは、この1週間で全て交代した。ZNPPに駐在するチームは、来週交代する。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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