ウクライナの原子力発電所の状況 #191
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◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第275号(現地時間2025年2月14日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、14日早朝に発生したドローンによる攻撃で、1986年のチェルノブイリ(チョルノービリ)事故で損傷した原子炉の残骸を閉じ込める「NSC」と呼ばれる建物で火災が発生したことを明らかにした。その上で、軍事紛争中の原子力安全に対する継続的なリスクを浮き彫りにする、非常に憂慮すべき事態であると強調した。
チョルノービリ・サイトに駐在するIAEA専門家チームは、現地時間午前1時50分に爆発音を耳にし、その後、煙と火災の発生を確認した。また、事故で損傷した4号機からの放射性物質の放出を防ぎ、外的な危険から保護するために建設された、大規模な建造物である新安全閉じ込め構造物(NSC)にドローンが衝突したとウクライナ側から報告を受けた。
消防隊員と車両が、発生から数分以内に現場に到着し、消火活動を行ったが、その後も数時間にわたり断続的に火の手が確認された。
IAEA専門家チームは、NSCの外層に生じた破損を確認した。ウクライナの規制当局からの情報によると、NSCのアーチの外側に損傷が確認され、内側の状態を確認するための調査が引き続き行われている。
IAEA専門家チームは、NSC内外の放射線量は正常かつ安定していると報告を受けた。現在のところ、死傷者は確認されていない。
最近のウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)付近での軍事活動の活発化の直後、グロッシー事務局長は、軍事紛争が続く限り、原子力安全が常に脅威にさらされていることが改めて浮き彫りになったと述べた。
グロッシー事務局長は続けて、「警戒を緩める余地はなく、IAEAは引き続き厳戒態勢を敷いている」と強調し、「ウクライナの原子力関連施設周辺で、軍事行動の最大限の自制を改めて求める」と訴えた。
IAEAは新たな情報が入り次第、チョルノービリ・サイトの状況について最新の状況を報告する予定である。
今週、ZNPPに駐在するIAEA専門家チームの交代がキャンセルされたことを受けて、グロッシー事務局長は、専門家チームの交代時の安全をなるべく早く確保するため、ウクライナ・ロシアの双方と連絡を取っていると明かした。IAEAは、原子力安全とセキュリティを監視および評価し、原子力事故を防止するために、2022年9月からZNPPに駐在している。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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