ウクライナの原子力発電所の状況 #192


 ◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第276号(現地時間2025年2月15日)[仮訳] 

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は15日、1986年のチェルノブイリ(チョルノービリ)事故で損傷した原子炉の残骸を閉じ込める「NSC」と呼ばれる建物への14日のドローン攻撃後、まだくすぶっている火を完全に消火するため、凍えるような寒さの中、ウクライナの消防士たちが24時間体制で作業を行っていることを明らかにした。

チョルノービリ・サイトに駐在するIAEA専門家チームは、制限なしで現場への立ち入りを許可され、新安全閉じ込め構造物(NSC)の被害を評価するために広範囲にわたる視察を実施した。14日の早朝に攻撃を行ったドローンは、損傷した原子炉からの放射性物質の放出を防ぎ、外部の危険から原子炉を守るために建てられた大きなアーチ型の建造物の屋根に穴を開けた。

IAEA専門家チームはNSCの屋根から煙が出ているのを目撃し、プラスチックの燃える臭いも確認した。

屋根に使用された可燃性物質の影響でいまだにくすぶる火を消火し、延焼を防ぐための取組みを継続しているため、NSCの損傷の修復作業の開始は遅れている。NSCは、約40年前の事故直後に建てられた石棺の上に建造され、2019年に完成した。

ドローンの攻撃による深刻な被害にもかかわらず、IAEA専門家チームは、現場での放射線量に変化はなかったと報告を受けた。また、専門家チーム自身が実際に測定したNSC付近の放射線量も、IAEAが2年以上前から現場で継続的に活動を開始して以降記録してきた値と比較し、異常はなかった。

グロッシー事務局長は「ドローンが主要な原子力施設の大型防護構造物を攻撃し、損傷させたことは、明らかに非常に重大な事象だ。この壊滅的な軍事紛争の中で私が繰り返し述べてきたように、原子力施設への攻撃は絶対に許されず、決して起こってはならない」と訴えた。

グロッシー事務局長は続けて、「特にザポリージャ原子力発電所周辺で軍事活動が活発化しており、懸念が大きい。IAEAは原子力事故の防止に全力を尽くすと約束しているが、最近の状況を見る限り、原子力安全は依然として大きな脅威にさらされている」と述べた。

本日のNSCの視察中、IAEA専門家チームのメンバーは、ドローンによる攻撃とそれに伴う火災による被害が広範囲に及んでいるのを確認した。専門家チームは、NSCのアーチの外側と内側の両方に、直径約6mの穴が開き、機器や電気ケーブルの損傷も確認した。しかし、NSCの構造を支える部分に大きな損傷は見られなかった。

IAEA専門家チームは、翼の破片も含む、ドローンの残骸の一部も確認した。残骸はウクライナの専門家によって、さらなる分析のために回収された。

IAEA専門家チームは、ドローンの被害を受けたエリア付近に放射線量とエアロゾルの濃度を測定するための追加のセンサーを設置する予定であると報告を受けた。なお、センサーが損傷しないよう、残る火災が完全に鎮火した後に作業を開始する予定。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-276-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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