ウクライナの原子力発電所の状況 #194

◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第278号(現地時間2025年2月27日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は27日、ドローンによる攻撃から2週間が経過した現在も、チョルノービリ・サイトでウクライナの消防隊が、1986年の事故で損傷した原子炉の上に建てられた巨大なシェルター内での消火活動に取り組んでいることを明らかにした。
チョルノービリ・サイトに拠点を置くIAEA専門家チームは、損傷した原子炉を覆う石棺から放射性物質が大気中に放出されるのを防ぎ、外部の危険から原子炉を守るために設計された新シェルター(NSC)に、2月14日早朝の攻撃で大きな穴が開き、制限のない立ち入りし、状況を注意深く監視してきた。
ウクライナが実施している頻繁な放射線モニタリングとIAEAが独立して実施する放射線モニタリングでは、NSC内だけでなくチョルノービリ・サイトの他の場所においても、引き続き正常な値が示されている。
ウクライナの専門家らは、監視用ドローンなど、赤外線による画像分析を使用して、アーチ型のNSCの層構造の間の断熱材でくすぶる火を発見し、水を注入して消火した。
400人を超える緊急時対応要員が現場で交代勤務を行い、ドローン攻撃後の対応に取り組んでいる。
グロッシー事務局長は「消防士やその他の対応を行っているスタッフは、ドローン攻撃による被害に対処するため、困難な状況下で懸命に働いている。さらにひどい事態になる可能性もあったとはいえ、原子力安全の観点からは現時点で明らかに重大な事故である。この壊滅的な軍事紛争の最中に繰り返し述べてきたように、原子力関連施設への攻撃は決して起こってはならない」と述べた。
軍事紛争中の原子力安全の維持に対する課題が依然として存在していることをさらに浮き彫りにするのは、チョルノービリ・サイトのIAEA専門家チームが先週、複数の空襲警報を報告し、時にはNSCの屋根の消火活動を中断せざるを得なかったことだ。IAEAはまた、使用済み燃料中間貯蔵施設の上空で発見された2機を含む、チョルノービリ・サイトから5km圏内で複数のドローンを検知したと報告を受けた。
これとは別に、本日27日、IAEA専門家チームがキーウで、ウクライナがNSCへの攻撃後に回収したとしているドローンの残骸を確認した。専門家チームはドローンの部品を観察し、特徴がシャヘド・ドローンと一致すると評価したものの、チームはドローンの出処についてそれ以上の評価は行わなかった。
また今週、IAEA専門家チームはウクライナを訪れ、ここ数か月の同国のエネルギーインフラへの広範囲にわたる攻撃で被害を受けた、変電所の状況を評価するため、さらなる調査を行った。
原子力発電所には、発送電ならびに原子炉冷却やその他の原子力安全に必要な電力供給のため、変電所が必要不可欠である。
IAEA専門家チームは変電所の現状を監視し、原子力安全を強化するためにIAEAが実行可能なさらなる措置や提供できる技術支援を絞り込むための情報を収集した。
ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)では、2月初めに軍事活動により約1週間切断されていた唯一の330kV予備送電線が、再び利用可能になったとIAEA専門家チームが報告した。しかし、ZNPPの外部電力事情は依然として非常に厳しい状況にある。
IAEA専門家チームは、ZNPPのサイト付近を含め、毎日爆発音を耳にしている。2月24日の夕方、専門家チームは機関銃の連射音を確認した。今のところ、サイトへの被害は報告されていない。
ウクライナで稼働中のフメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所に駐在するIAEA専門家チームは、ほぼ毎日空襲警報を耳にしており、フメルニツキーの専門家チームは今週、ホテルへの避難を余儀なくされたこともあった。
南ウクライナ原子力発電所のIAEA専門家チームは2月25日早朝、サイトから東3kmの地点でドローンが目撃されたとの報告を受けた。同日朝、専門家チームは、対空砲火の音を確認した後、少し離れた場所からの爆発音を耳にした。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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