ウクライナの原子力発電所の状況 #195

◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第279号(現地時間2025年3月5日)[仮訳]
遅れていたザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の専門家チームの交代完了後、ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、加盟国に対して、ウクライナの原子力発電所にとってのIAEAの存在は、国際社会にとって「かけがえのない資産」であり、維持されなければならない、と語った。
グロッシー事務局長は、今週定例会合を開催するIAEA理事会への書面での挨拶の中で、「困難な状況により、この1か月にZNPPのIAEA専門家チームの交代は遅れていたが、この数日間で無事完了した」と述べた。
12月には、IAEA専門家チームの交代に向かうIAEA公用車がドローンによる攻撃で大きな損傷を受け、2月には活発化する軍事活動により計画されていた交代の中止を余儀なくされたが、今月初めにようやく完了した。現在の専門家チームは、グロッシー事務局長がZNPPでの継続的な専門家チームの駐在を開始して以来27チーム目であり、原子力安全とセキュリティは依然として不安定な状態にある。
グロッシー事務局長は「ウクライナにおけるIAEAの活動はすべて、国連総会およびIAEAの方針決定に関する正式な決議に沿って行われている」と強調した。
ZNPPに駐在するIAEA専門家チームは、至近1週間にわたってほぼ毎日、さまざまな距離からの爆発音を耳にしている。
ZNPPのIAEA専門家チームは、1号機の安全システムの一部の定期メンテナンスが完了し、稼働を再開したと報告を受けた。同時に、1号機の安全システムの別の箇所のメンテナンスが開始された。
チョルノービリ・サイトでは、消防隊によって、2月14日のドローンによる攻撃で発生した新シェルター(NSC)の屋根の火災の消火活動が進展を見せている。IAEA専門家チームは、至近2日間でボヤは確認されていないと報告を受けた。現場では引き続き、赤外線による画像分析とドローンを活用してNSCの監視を行っている。
チョルノービリ・サイトは、引き続き放射線量のモニタリングを頻繁に実施し、その結果をIAEA専門家チームに報告している。IAEA専門家チームも独自のモニタリングを実施している。現在までに、すべてのモニタリング結果において、放射線量の正常な範囲を超えた上昇や異常値は確認されていない。
チョルノービリ・サイトのIAEA専門家チームは、先週、空襲警報が複数回発令されたことを報告した。さらにIAEAは、ウクライナの規制当局から、3月1日の早朝、チョルノービリ・サイトがドローンの飛行を確認したと報告を受けた。
先週、IAEA専門家チームは、ウクライナの原子力安全とセキュリティにとって重要な7か所の変電所を再度視察した。
昨年行われた前回の訪問時と同様に、IAEA専門家チームは変電所の現状を視察し、至近数か月の攻撃がウクライナの原子力関連施設の安全な運転に及ぼす潜在的な影響を評価し、IAEAが提供できるさらなる技術支援を絞り込むための情報を収集した。
ウクライナで稼働中のフメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所に駐在するIAEA専門家チームは、原子力安全とセキュリティの状況を監視し続けている。専門家チームはほぼ毎日空襲警報の発令を報告しており、フメルニツキーの専門家チームは3日にサイト内で避難した。フメルニツキーの原子炉1基は先週末、燃料交換とメンテナンスのために計画停止に入った。
一方、IAEAは、ウクライナの原子力安全とセキュリティを支援する包括的支援プログラムを継続しており、新たに3回の物資納入を行い、軍事紛争開始以来の物資の調達は111回となった。
ウクライナの水文気象センターとウクライナ非常事態庁の水文気象機関は、放射線測定器を受領し、エネルゴアトム社の使用済み燃料貯蔵施設には赤外線カメラが届けられ、フメルニツキーの医療チームは医療機器と物資を受け取った。これらは、欧州連合(EU)、ノルウェー、米国の資金提供によって行われた。
グロッシー事務局長は「我々は30か国すべての援助国とEUによる特別拠出金に感謝するとともに、可能な国には、未だ2,200万ユーロが必要な包括的支援プログラムの実施支援を呼びかける」と理事会で語った。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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