ウクライナの原子力発電所の状況 #198
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第282号（現地時間2025年3月27日）[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関（IAEA）事務局長は、IAEA専門家チームが今週、外部電源に関して厳しい状況が続くザポリージャ原子力発電所（ZNPP）でディーゼル発電機の稼働試験を視察したことを明らかにした。これは、ウクライナでの軍事紛争中に原子力事故を防ぐための継続的な取り組みの一環である。
軍事紛争中、ZNPPは外部電源との接続を何度も断たれ、原子炉の冷却やその他の重要な原子力安全・セキュリティに関する機能に必要な電力を一時的にディーゼル発電機からの供給に頼らざるを得なかった。今回実施された試験は、発電機が問題なく稼働していることを確認するために行われた。
グロッシー事務局長は「ZNPPの外部電源との接続状況は依然として非常に不安定なため、ディーゼル発電機が問題なくすぐに起動できることが非常に重要だ。IAEA専門家チームは今週、ZNPPが再び外部電源を失った場合、試験されたディーゼル発電機が、代替として機能することを確認したが、ディーゼル発電機の状態には引き続き注意が必要である」と述べた。
ZNPPには原子炉6基に対し、20台の非常用ディーゼル発電機（EDG）がある。2011年の福島第一原子力発電所の事故を受けて導入された安全対策の一環として、ウクライナは移動式ディーゼル発電機（MDG）6台を設置した。そのうち4台は原子炉に接続されており、2台はサイト外で使用されている。昨年、ZNPPは3台の新しいMDGを調達し、それぞれ3棟のタービン建屋の隣に設置されたが、まだ接続はされていない。IAEA専門家チームは、今週行われたEDG1台と新しいMDG1台の試験に立ち会った。
また、IAEAは、ZNPPのディーゼル発電機用に貯蔵されていた燃料が流出したとの報告を把握している。なおZNPPは、その件について質問を行ったIAEA チームに対し、「誤報」であり、燃料タンクからそういった漏洩は検出されていないと述べた。さらに、ZNPPはディーゼル発電機が最低でも10日間稼働するのに十分な量の燃料を貯蔵していると強調した。IAEAは、実際の状況を直接独自に評価するため、燃料タンクの視察を要請した。
IAEA専門家チームは至近1週間で、ZNPPの安全システムのメンテナンスの監視を継続し、緊急事態への備えと対応の取り決めについてZNPPと協議した。専門家チームはサイトの水道施設と4号機の原子炉建屋を視察し、いくつかの部屋に乾燥したホウ酸の痕跡が見られ、ポンプのシールに欠陥があることも確認した。
IAEA専門家チームは21日、ZNPP近くのザポリージャ火力発電所（ZTPP）の330kV開閉所の損傷により、330kV開閉所とZNPPとの接続が切断されてから約1か月半経って、ZNPPの750kV開閉所に再接続されたとの報告を受けた。これにより、ZNPPへバックアップの電力供給を再び行えるようになった。
IAEA専門家チームは、この1週間のあいだ、ZNPPからさまざまな距離で軍事活動の音を耳にしたと報告した。
その他のIAEA専門家チームは、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所とチョルノービリ・サイトの状況を監視し続けた。
フメルニツキーでは、21日に系統運用事業者からの要請により750kV送電線1系統が切断され、同日夜に再接続されたが、1基の原子炉では燃料交換作業が継続されている。リウネでは、原子炉1基が燃料交換作業のため、計画停止している。南ウクライナのIAEA専門家チームは、ポンプの漏れが修理され、1号機が通常運転を再開したと報告を受けた。
チョルノービリ・サイトでは、火災により、外部電力を供給する330kV送電線1系統が緊急停止した。ウクライナ国家非常事態庁が鎮火後、送電線は復旧した。
4サイトに駐在する各IAEA専門家チームは、至近1週間に空爆音を確認したと報告した。チョルノービリ・サイトの専門家チームは21日の夕方、サイトから3km離れた場所でドローンが検知されたと報告を受けた。それとほぼ同じ時刻に、専門家チームは大きな爆発音を耳にし、飛行中のドローンも目撃した。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ（チェルノブイリ）、
キーウ（キエフ）、ハリキウ（ハリコフ）
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間：2022年2月24日～2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間：2022年3月4日～
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