ウクライナの原子力発電所の状況 #20
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第96号(現地時間2022年8月28日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA)はウクライナより、ザポリージャ原子力発電所 (ZNPP) サイトへの新たな砲撃について報告を受けた。それによると、すべての安全システムは稼働しており、が放射線レベルの上昇はない。
以前に伝えたように、ZNPPは辛うじて稼働中の750kV の外部送電線への接続を木曜日に一時的に失ったが、その後、外部電源との接続を継続していた。木曜日の外部電源喪失の間、電力網から切り離されていた2基は金曜日に再接続され運転を再開している。他の4基は木曜日の事象よりも以前に送電網から切り離されており、運転を停止したままである。
木曜日、金曜日、土曜日にZNPPのエリアで砲撃があったが、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長によると、ウクライナはすべての被害状況の把握に至っていない。砲撃があったのは、原子炉建屋から約100メートル離れた二つの 「特別建屋」 と一つの陸橋部分である。これらの建物には、水処理、設備修理、廃棄物処理などの施設がある。敷地内の水道管も一部損傷していたが、補修された。
グロッシー事務局長は、ウクライナからの情報を引用して、ZNPPサイトの放射能測定値はすべて正常範囲内で、水素漏れの兆候はなかった、と述べた。
この最近の砲撃は、3月初めからロシア軍によって管理され、ウクライナのスタッフによって運転されているヨーロッパ最大の原子力発電所であるZNPP における潜在的な原子力事故の危険性をあらためて気づかせることになった。
グロッシー事務局長は、原子力安全とセキュリティの確保を支援するため、今後数日以内にIAEA専門家ミッションを同発電所に派遣することを目指し、すべての関係者との協議を続けていると述べた。同ミッションは、ZNPPの施設の物理的損傷を評価し、主要およびバックアップ設備やセキュリティシステムの健全性を評価し、現場での緊急の保障措置活動を実施することに加えて、スタッフの労働条件も評価する。
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第95号(現地時間2022年8月26日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナの報告によると、ザポリージャ原子力発電所 (ZNPP) が冷却およびその他の安全機能のために外部電源への接続を継続していること、およびZNPPが重要な送電線への接続を一時的に失った翌日に、原子炉1基が送電網に再接続された、と述べた。
ウクライナの報告では、ZNPPの最後に残る750kV 送電線への接続が2度にわたり切断され、運転中だった2基の原子炉が電力網から切り離されたが、昨日午後復旧し、うち1基は本日送電網に再接続された。
グロッシー事務局長は、外部送電線の復旧を歓迎すると表明。この送電線の切断は、紛争地域の中心に立地する大型原子力発電所の潜在的な脆弱性と、6基の原子炉を有する施設にIAEAの専門家ミッションをできるだけ早く派遣し、原子力安全とセキュリティの安定化を支援することの決定的重要性を浮き彫りにした、と付け加えた。
「私は、あらゆる関係者との積極的かつ集中的な協議を継続し、早期に、できれば数日以内に、ZNPPへのIAEAのミッションを組織し指揮を執る。昨日の突然の外部電源の喪失が示したように、IAEAが現場に存在することが緊急に必要である」とグロッシー事務局長は述べた。
ウクライナがIAEAに伝えたところによると、ZNPPは現在、国内送電網の一部を構成する750 kV送電線と、必要に応じて敷地外から電力を供給することができる近隣の火力発電所との330 kV送電線の両方に接続されている。
昨日の外部電源喪失の間、それが発生した場合の発電所の安全マニュアルに基づき非常用ディーゼル発電機が起動したが、330 kVのバックアップ用送電線はその間ずっと接続されたままで稼働していた、とウクライナは報告した。ZNPPには通常4系統の750 kVの外部電源ラインがあるが、そのうちの3系統は紛争中に失われている。
送電線は主に、運転中の原子力発電所から家庭や工場などに供給するために送電網を介して電力を送るために使用される。また、原子力発電所はその日常業務のために、また緊急時や事故時に必要な安全システムに電力を供給するために、一定の電力供給を必要とする。昨日のZNPPの場合のように外部電源が失われた場合、公衆や環境に放射線影響を及ぼす事故を防止するために、安全システムのためのバックアップ電源を有することが不可欠である。バックアップの電力は、非常用ディーゼル発電機または追加の予備の送電線によって供給することができる。
送電網からの外部電源による確実な電力供給およびバックアップ電源システムは、原子力安全を確保するために不可欠である。この要件は、事務局長が紛争当初に示した原子力安全とセキュリティ確保に関する7つの原則の一つである。
◆第10回核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議 最終文書の採択をめざすも決裂を受け、
国連事務総長広報官の声明(現地時間2022年8月27日)
◆マクロン大統領、ウクライナのザポリージャ原子力発電所へのIAEAミッションの支援を再表明(現地時間2022年8月26日)
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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