ウクライナの原子力発電所の状況 #200

◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第284号(現地時間2025年4月3日)[仮訳]
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、厳しい軍事紛争の中でウクライナの原子力発電所の運営スタッフに適切な医療を提供できるよう、新しい救急車やその他の医療機器を納入したことを明らかにした。
救急車は3月28日、ウクライナ・エネルゴアトム社の緊急技術センターに引き渡された。これは、3か所で稼働中の原子力発電所、チョルノービリ・サイト、およびプラント・スタッフに重要な医療支援を提供する近隣の病院や医療施設の能力を評価するための、12日間のIAEAミッションの一環として行われたもの。
グロッシー事務局長は「原子力安全とセキュリティには、メンタルヘルスのサポートを含む医療サービスへ迅速にアクセスできる、充分な人材体制が必要だ。これらの施設のスタッフは、非常に厳しい状況下で3年以上働いており、必要不可欠な電力を安全に供給し続けてきた。彼らの心身の健康は、原子力安全とセキュリティにとって極めて重要である」と述べた。
今回IAEAがウクライナに提供した救急車はこれで3台目。これに加え、超音波診断装置がフメルニツキー原子力発電所に近いネティシン市の医療施設に届けられた。
最近のウクライナへのミッションの中で、IAEAの医療および調達に関する専門家は、ウクライナの原子力発電所の運転スタッフ向け医療支援プログラムを通じて、これまでに提供された支援の効果や今後のニーズについて、各原子力発電所の医療部門や近隣の病院の医療関係者と心理の専門家と話し合った。IAEA専門家チームは、国立放射線医学研究センター(NRCRM)も訪問した。
グロッシー事務局長は「極めて重大な任務を遂行する上で、医療従事者が日々直面している多くの課題や困難をより深く理解することは、非常に重要なものだった。調査結果に基づき、IAEAは最も必要とされる場所に医療支援を提供できるだろう」と述べた。
至近1週間で、IAEAはウクライナに対し、原子力安全とセキュリティの維持を支援するためのその他の技術的支援と援助も継続しており、軍事紛争開始以来、計120件・総額1,600万ユーロ相当の物資の調達を行った。
先週、ヘルソン州立臨床病院には超音波機器およびX線撮影機器が納入された。これは、2023年にカホフカ・ダムの破壊により深刻な被害を受けた地域を支援するために、IAEAが原子力や同位体技術を活用した機器を提供し支援を行うという、IAEAの取組みの一環。今後数か月以内に、さらなる機器の提供が予定されている。
これとは別に、医療、産業などの目的で使用される放射性物質の管理に携わる国営企業であるUSIE Izotop社は、原子力と放射線の安全とセキュリティに関する日々の現場を支援する車両が提供された。
これらの納入は、カナダ、イタリア、日本、韓国、マルタの資金提供によって行われた。
こうした支援にもかかわらず、ウクライナ国内すべての原子力発電所に継続的に駐在しているIAEA専門家チームの評価によれば、ウクライナの原子力安全とセキュリティの状況は依然として不安定なままである。
ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)では、IAEAチームが、サイトからさまざまな距離で軍事活動の音を耳にしたと報告した。専門家チームは、原子力安全とセキュリティの監視を継続し、1、3、5号機の原子炉建屋と1、2号機のタービン建屋を視察した。
他にも、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所とチョルノービリ・サイトに拠点を置くIAEA専門家チームは、至近1週間で空襲警報を複数回確認したと報告している。チョルノービリ・サイトの専門家チームは、3月30日夕方に大きな爆発音とドローンの音も耳にした。
至近1週間、リウネ、南ウクライナ、チョルノービリの各サイトのIAEA専門家チームは交代し、数週間にわたり原子力安全とセキュリティを監視してきたスタッフに代わって、新たなスタッフが着任した。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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