グロッシーIAEA事務局長、ウクライナへの支援強化を発表
◆グロッシーIAEA事務局長、ウクライナへの支援強化を発表(現地時間2024年9月3日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA)は9月3日、以下の声明を発表した。
IAEAは、原子力安全を確保し、また重要なエネルギーインフラの現状を保護するため、ウクライナへの支援をさらに拡大する。本日、ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、ウクライナのゼレンスキー大統領とのキーウでの会談後、ミサイル攻撃を受けて今回の支援強化を決断したことを明らかにした。 ウクライナでは相次ぐミサイル攻撃により、複数の原子炉で外部電源との接続が切断されるなど、国内電力系統の安定が損なわれている。
IAEA専門家チームはまもなく、原子力安全にとって不可欠なウクライナの変電所のうち、被害を受けた複数サイトを訪問する予定である。専門家チームはこれらの変電所の状況を評価し、今後の対応について報告する予定だ。
グロッシー事務局長は、「運転中の原子力発電所の安全性は、電力系統に安定的かつ信頼性の高い接続ができるかにかかっている。紛争の結果、電力系統の状況はますます脆弱になりつつあり、この点で既に危険な状況である。私は、紛争中の原子力事故防止を支援するためにIAEAが活動を拡大し、原子力安全とセキュリティの面から、より詳細に検証することでゼレンスキー大統領と合意した」と述べた。
その上で、グロッシー事務局長は、「専門家チームは、原子力分野の安全性と重要インフラの保護に関するIAEAの専門知識を活用して、これらの変電所を評価するつもりだ」とした。
IAEAは既にウクライナのすべての原子力発電所に専門家チームを駐在させており、軍事紛争中の原子力安全とセキュリティの維持に努めている。原子力安全に不可欠な変電所は国内のさまざまな地域に立地しており、これらの評価も重要である。
至近6か月間、エネルギーインフラへの軍事的圧力が高まったことにより、送電系統が不安定になり、ウクライナの原子力発電所に深刻な問題が生じている。信頼性の高い外部電源へのアクセスは、2022年3月にグロッシー事務局長が概説した原子力安全とセキュリティの維持に不可欠な7つの柱の一つでもある。
8月26日、ウクライナのエネルギーインフラを標的とした広範囲にわたる攻撃により、電力供給に大きな影響を与え、リウネと南ウクライナの両原子力発電所の原子炉が一時的に停止、または切断された。そのうちの一つは、まだフル稼働に戻っていない。フメルニツキー原子力発電所とチョルノービリ・サイトの外部電源も影響を受けた。
紛争の最前線に位置するザポリージャ原子力発電所(ZNPP)は、紛争中、既に8回の外部電源喪失に見舞われ、一時的にディーゼル発電機に頼らざるを得なくなった。今週も、同発電所は月曜日の夕方、唯一残る330kVの予備送電線との接続を失い、750kVの主送電線1本のみに頼る状況となった。
グロッシー事務局長は今週後半、紛争開始後5回目となるZNPPを訪問する予定だが、ウクライナの他の施設における原子力安全とセキュリティ上のリスクを強調。 「ウクライナのエネルギーインフラの脆弱性が高まっていることは、ウクライナの原子力発電所の原子力安全にとって深刻な懸念事項だ。先週、国内の別地域にあるエネルギーインフラの被害が波及して、複数の原子炉が停止したのを確認した」と述べた。
グロッシー事務局長はさらに、「ウクライナは原子力発電による電力に大きく依存しているため、変電所が正常に稼働できることを保証することは、ウクライナのエネルギー安全保障にとって極めて重要である」と強調した。
キーウでは、グロッシー事務局長がゼレンスキー大統領と、中断したブルガリアのベレネ・プロジェクトからフメルニツキー原子力発電所向けに機器を購入するというウクライナの計画に対し、IAEAが技術支援と原子力安全に関する助言を提供することでも合意した。これにより、ウクライナは安全基準に則って、進行中の同プロジェクトを継続することとなる。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~